
なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライドおよび以下の解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。)
さて、明日からはもう二月でまさしく「本番直前」になりました。
みなさんは、「コロ助」や「インフル」にやられないように、人込みは避けて、適度の運動ときちんとした食事、睡眠を確保して、万全の体調を整えて本番に臨んでください。
弊社のHPにある「CEOのブログ」と「新着情報」では、1日おきに国試過去問とschool catのMadam Dorothyのご尊顔を配信していますが、本番まで半月になってきたことから、「番外国試対策(薬物動態編)」として、今までのルーチン配信と合わせて「吸収」「分布」「代謝」「排泄」「速度論全般」の各項目を、「109回薬剤師国家試験直前最重要要点チェック10項目」と題して、配信することにしました。各項目で「これが答えられれば、心配することはないだろう」というレベルの項目を、霊夢が出題しています。ここでは、それらの解説をやっていきましょう。
- pH分配仮説とは「薬物の分子形とイオン形の存在割合は、その薬物のpKaと存在場所のpHによってきまる」とする「仮説」です。この「仮説」は、弊社CEOが学部学生のころから「仮説」のままで、いったいいつになったら「定理」になるのか?と思っているのですが、薬物動態学には「定理」はないので、まあそんなことはどうでもよろしいのですが、ポイントは(ここはマジで重要なところ)、薬物の細胞膜透過は「分子形」のみになるので、「分子形」薬物が存在する割合の大きくなる(体内)「pH」や、その薬物固有の「pKa(酸解離定数)」をもとに、「計算して」分子形薬物の存在割合を出せば、その薬物が「細胞膜透過をしやすい薬物」か「そうでない薬物か」がわかるということでした。実は、薬物の細胞膜透過にはもう一つの重要なファクターがあるのですか、わかりますよね。そう、「脂溶性」です。でも「吸収のところで国試頻出の重要事項」といったら、「脂溶性」はCBTレベルの当たりまえの話なので、出てくる頻度は減るというわけです。そして上に書いた「計算」で薬物の「分子形」存在比を出すわけですが、それが、8番に書いてある「Henderson-Hasselbalchの式」ということですね。この式は3つの表現型がありますが、試験中に導出している暇はありませんから、式は覚えておくのは「must」です。
- 薬物の膜透過機構は、受動拡散、能動輸送の大きく2つに分けられ(マイナーなところでは、エンドサイトーシス、エキソサイトーシスもあり)、能動輸送では一次性、二次性能動輸送があります。それらの特性は大丈夫ですね?また、一次性能動輸送の代表的なトランスポーターの名前と発現場所、輸送基質なども確認しておきましょう。二次性能動輸送担体もしかりです。ほかにも、トランスポーターを使うがエネルギーをつかわない「促進拡散」を使った薬物の輸送もありましたね。
- Fickの拡散の第一法則は、単純拡散の時に使われる公式で、式が求めているのは「薬物の膜透過速度」であることをしっかり認識しましょう。文章でいえば、「薬物の膜透過速度は、膜内外の薬物の濃度勾配と膜の実効表面積に比例し、膜の厚さに反比例する」というものです。式そのものは、みなさんが大学で使っている教科書や予備校の参考書で必ず復習してくださいね。
- トランスポーターを使った膜透過を表す式はMichaelis-Menten式で、非線形薬物動態の代表的な式になります。式の左辺は、Fickの時と同じく「薬物の膜透過速度」です。この式(グラフ)には、「Km」ミカエリス定数という独特なパラメータができてきますが、意味が分かっていますか?最大膜透過速度の半分の速度を表すときの「基質濃度」になるのですね。いわゆる「計算」的な話としては、輸送基質濃度がKmより大きい場合の近似、小さい場合の近似がどうなるのか、をまとめれれていればオッケーです。吸収過程での非線形薬物動態は、トランスポーターそのものを問われる問題も出てきて、これは覚えるしかないです。例えばPEPT1はセフェム系抗生剤の小腸粘膜上皮細胞からの吸収に係る二次性能動輸送担体である、なんてことは大丈夫でしょうか?
- これは2番のところでお話ししましたが、本番直前の総まとめとしては、自分で、トランスポーターの分類、具体的なトランスポーターの名前、その発現場所(国試レベルで重要なトランスポーターの発現場所は、小腸上皮細胞、肝小胞中の毛細胆管への胆汁排泄部位、尿細管分泌・再吸収に係る尿細管上皮細胞の3か所くらい)、輸送する基質、を「手書きの表」を作って頭の中に叩き込みましょう。
- 胃内容排出速度(GER)では、胃を含めた腸管系の蠕動運動を亢進させれば吸収がよくなり、逆の過程では吸収が悪くなりという、108回問42の「霊夢の国試問題解説」にでていた「謎の呪文、黒象パン減」を思い出しましょう。見ていない人は、弊社HP「CEOのブログ」と「新着情報」のアーカイブから見てください。あとは、リボフラビンのトランスポーターが胃の直下の十二指腸のところに発現しているので、GERとの関係でリボフラビンの吸収に飽和が起こるということも、昔からよく出題されています。
- 非攪拌水層とはなんで、どこにあるのか?は大丈夫でしょうか?小腸上皮細胞の微絨毛付近の「停滞している水域」です。ここには「水」があり、その直下は小腸上皮細胞の「脂質二重膜構造」です。従って、脂溶性の高い薬物(大概は脂溶性が高い)は、非攪拌水層は「攪拌されにくく」、その直下の上皮細胞脂質二重膜(脂溶性に富む)では、油と油で細胞膜透過が容易になります。よって、通常の薬物は「非攪拌水層」の通り抜けが吸収されるためには「律速段階」となり、「非攪拌水層透過律速」になるのですね。
- これは1番でお話ししたので省略します。
- 吸収の問題としてはマイナーな部類に入りますが、「消化管吸収以外の部位からの薬物吸収」として、口腔粘膜、皮膚、涙、肺、肛門、膣からの吸収です。このうち出るとすれば肛門坐剤ですね。復習する順番は、①直腸吸収、②口腔粘膜からの吸収、③肺吸収ぐらいで十分でしょう。
- 薬物相互作用にはいろいろあって、ちょっとここには書ききれないくらいです。おなじみなのは「テトラサイクリン系抗生剤は2価、3価のカチオン含有製剤(制酸剤中のアルミニウム)や食物(牛乳)との同時服用は避ける(キレートを形成して吸収率が低下する)」、とか、「小腸上皮細胞に発現しているCYP3A4はグレープフルーツジュースによって不活化される」、なんていうことは、もうしっかり頭の中にはいっているでしょうね?
いろいろ言い出したら切りがないけど、この10個の要点がちゃんと答えられたら、まあ、吸収過程に関しては心配ない、ということかな。