今日の国試直前の動態最重要要点チェック8項目は「代謝」過程です。厳選した項目は?となったら、10項目ではなくて8項目になってしまいました。ご了解ください。まずは、昨日までの注意と同じです。YouTubeショートの霊夢の「ゆっくり解説」を聞いてから、下の<突っ込んだ解説>を見ないで、頭の中で自分の知識を整理してみましょう。それから「答え合わせ」のつもりで、下の<突っ込んだ解説>スライドを見てください。ちょとでもあやふやな知識があったら、すぐに教科書なり、予備校の参考書を広げて確認しましょう。

なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
<突っ込んだ解説>
さて、3日目は代謝です。まあ「暗記もん」です。嫌ですが、ある意味得点源かもしれません。この頃の代謝問題の傾向としては、構造式を出してきて、代謝によって構造がどう変化するか、というように、カタカナのお薬の名前だけではなくて「構造式がわかってなんぼのもんだ」というような傾向になっています。これは、弊社CEOとしては歓迎するところです。やはり有機化学は薬学を支えるバックボーンの一つですから。ただ、国試直前のこの時期に、構造式を覚えるのはナンセンスです。ではどうするか?過去問を見てみましょう。過去問の「代謝」のところで出てきたお薬の構造式を、自分で紙と鉛筆で書いてみましょう。それだけでも、やるとやらないでは大違い。本番までの2週間で記憶のどこかには引っかかるはずです。いうまでもありませんが、国試問題1問にかけられる時間はせいぜい2分程度。配点は均等に2点です。これを考えたら「点数を1点でも多く獲得する」ために、構造式を「手書きして」、頭の中に印象を植え付けるのは、悪い戦略ではないと思います。
さて、代謝のところの最重要要点を見ていきましょう。
- 第Ⅰ相反応、第Ⅱ相反応、抱合反応には、具体的にいろいろな反応が含まれますが、酸化反応には、①アルキル基の水酸化、芳香環α炭素の水酸化、②脂肪族環、芳香族環の水酸化、③脂肪族及び芳香環二重結合のエポキシ化、④N-アルキル基、0-アルキル基、S-アルキル基の脱アルキル化、などの反応があります。従って、解説スライド1. ①のオレフィンのエポキシ化は酸化反応です。還元反応には、①ニトロ基の還元、②アゾ基の還元、③カルボニルの還元、キノンの還元、などがあります。加水分解反応には、①エステルの加水分解、②酸アミドの加水分解、エポキシドの加水分解などがあります。プロドラックが血液中で活性体に変化するのは、血液中の加水分解酵素(ヒドロキシラーゼ)による反応です。抱合反応にもいろいろな反応がありますが、「国試直前のヤマ」といったら「グルクロン酸抱合」でしょう。「グルクロン酸抱合―腸肝循環-βグルクロニダーゼ―モルヒネ」というキーワードのセットが頭の中に浮かんでくればオッケーです。他の「抱合反応」のヤマとしては、「イソニアジドのアセチル化」を見ておきたいところです。あとは、薬物代謝酵素の精製法(後述)と、薬物代謝酵素は、肝以外に小腸上皮細胞上に発現していること。バイオアベイラビリティーの計算問題で、いわゆる「Fg」の値を求めるところも、チェックしておきましょう。
- 次は、薬物代謝酵素の大御所ともいえる「P450」の諸性質です。レベル的には必須問題文章題クラスですが、「P450がやっていること」は、「薬物に1酸素原子を導入する反応」だということです。このいわゆる「P450サイクル」は、多分、薬物動態分野では出なくて、出るとすれば衛生化学かも?という気はします。重要な点ですが、作問者の立場で考えると、「他に聞かなければいけないことがありすぎて、P450サイクルの出題順位はずいぶん下位になる」からです。
- 次は、P450の精製方法で、これは「物・化・生」の生物でも「酵素の精製法」として出題される可能性があります。生物系の研究室で、酵素の精製なんかを卒研でやった人にはすぐわかる話ではないでしょうか?
- バイオアベイラビリティ(F)の計算です。教科書によっては「生物学的利用率」として別に章立てしているものもありますが、みなさんご承知のように、F = Fa×Fg×Fhであって、Fa:消化管で吸収される割合、Fg:消化管で代謝を免れた割合、Fh:肝初回通過効果を免れた割合、になりますから、代謝のところでやってもよいわけです。この計算式は、肝クリアランスの問題と組み合わされて出題されます。例えば、肝血流量を(Qh)とおくと、肝クリアランスは、Qh×(1-Fh)で表される。正誤は?というような感じで、さあ、どちらですか?〇ですね。
- 細かく言うと、薬理遺伝学という学問に分類される項目です。国試としては「イソニアジド代謝における個人差、人種差」の話で、解説スライドにもあるように、日本人はNAT2に関してRAに分類されるという「よく見かけるあの問題」です。
- 酵素阻害と酵素誘導の話を確認しておきましょう。まずは酵素阻害。国試頻出なのが「イミダゾール環を有するシメチジン、ケトコナゾール、トリアゾール環を有するイトラコナゾールが、CYPのヘム鉄と錯体を形成して可逆的にCYPの活性を阻害する」というものです。不可逆的な阻害はまず国試には出ないでしょう。なぜかって?酵素を永久的に失活されるということですから、熱を加えるとか、強酸、強アルカリで処理すればよいわけで、こんなことを出題しても意味がないからです。①にあるような「酵素の阻害によって生じる重篤な副作用」では、5-FUとソリブジンの同時服用時の重篤な副作用(過度の穀髄抑制により死亡例)がありました。もう少し詳しく話をすると、5-FUを代謝するジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼをソリブジンの代謝産物であるブロモビニルウラシルが阻害することによって、抗がん剤である5-FUが代謝されずに、いわば「効きすぎてしまう」ことになってしまい、抗がん剤の骨髄抑制という副作用が強く出すぎてしまったために起こった悲劇です。
- CYPの誘導剤のはなしで、これもよく出てきますね。薬物相互作用の文章題で頻出です。例えば、リファンピシンとトルブタミドを同時投与したらどうなるか?というような問題です。ご承知のように、リファンピシンはCYP2C9を誘導し、トルブタミドもこれによって代謝されるので、トルブタミドの血中薬物濃度の低下が速くなる、ということですね。このような組み合わせは予備校の参考書には必ず載っているので、もう一度チェックしておきましょう。
- 核内受容体を介するCYPの誘導メカニズムには3通りある。ということですが、ちょっと細かすぎる気もするのも正直なところです。理論問題の文章題では「CYPの核内受容体を介した誘導メカニズム」として出るかもしれません。核内受容体には①Ahr(アリルハイドロカーボン)受容体、②CAR(常在型アンドロスタン)受容体、③PXR(プレグナンX)受容体の3種があって、アリルハイドロカーボンは①に結合することで、CYP1A2を、フェノバルビタールは②に結合することでCYP2B6を、リファンピンは③に結合することでCYP3A4の転写を活性化するといくものです。3番くらいは頭の中に入れておきましょう。
ということで、10項目ではなく8項目になってしまいましたが、冒頭でもふれたように、ある意味「得点源」ですから、しっかり復習しておきましょう。
わかったかな?