速度論の3回目は経口投与の要点チェックです。まずは、いつものようにYouTubeショートの霊夢の「ゆっくり解説」を聞いてから、下の「関連重要要点スライド」を参考に、頭の中で自分の知識を整理してみましょう。以下の<突っ込んだ解説>でもお話ししているところですが、グラフが出ていたら、グラフからフリップ・フロップ現象が起きているか(試験ですから、多分フリップ・フロップは起きていますよ。そうしないと、問題が出題者にとって面白くないから)を見破れるかが、大きなカギになります。求めるのは吸収速度定数(ka)と消失速度定数(ke)なので、グラフ終末部の傾きをみて、どちらの定数が先に求まってくるのかを考えることがポイントです。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライド、および、以下の<突っ込んだ解説>は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。)
<突っ込んだ解説>
線形1-コン経口投与はややこしいですね。何といっても「吸収速度定数(ka)」という新たなパラメーターが出てくる点です。こいつと今まで使っていた「消失速度定数(ke)」との大小関係が問題になるのですが(解説スライドの3. 4. 5.)そこは後でお話ししましょう。
まず、線形1-コン経口投与で使われる血中薬物濃度の式(式1)は覚えましょう。Fはバイオアベイラビリティー、Dは投与量、Vdは分布容積であることは、いちいち言うまでもないとは思いますが、念のため。
次に、経口投与の計算問題では(一部、文章題でも)、「kaとkeの大小関係」は必ずと言ってよいほど出題されます(解説スライドの3.)。通常の「飲み薬」では「ka >> ke」の関係が成立しますが、徐放性製剤ではこの大乗関係が逆転し「ka << ke」の関係になることは、非常に重要です。そして、ポイントはこのka, keをどうやって求めるか?になります(解説スライドの4. 5.)つまり、通常の「飲み薬」では、消化管からの薬物吸収速度は、体内からの消失速度より大きいのですが、徐放性製剤ではこの関係が逆転するということです。横軸(時間軸)に対して、血中薬物濃度を片対数グラフの縦軸にプロットすると、みなさんがよく目にする山の形のグラフになります。そして、薬物投与から十二分に時間が経ったときには、このプロットを結ぶとそれはほぼ直線になります。これは薬物の吸収過程が済んでしまい、あとは薬物は体内から消失するだけという状態になるからです。そしでこの直線の傾きが「-ke/2.303」になるので、最初に消失相度定数(ke)が求められるわけですね。そしてこの「直線」を原点側に、縦軸と交わるまで延長します。次に、この「直線」から、「もとからプロットされている山形の曲線」のプロット値を引き算した値を、各時間の上にプロットしていきます。こうしてできたプロットを結んでいくと新たな「傾きが急な」直線がブラフ上に現れますが、この新しく出現した直線の傾きが「-ka/2.303」となり、ここから「吸収速度定数(ka)」が求められるのです。解説スライドの5. にあるように、徐放性製剤の時も作業としては全く同じことを行うわけですが、この時は、最初に出現する直線の傾きが「-ka/2.303)と、吸収速度定数になっている点が非常に重要で、国試でも出題されるのですね。ちなみに、このような解析作業を「残余法」とよびます。また、AUCの値も重要になり、これは解説スライドの(式1)を、時間(t = 0からt = ∞)まで積分することで求められ、その値は(式4)になります。AUCの中にはkaのパラメーターが出てこないことに注意してください。
さて、このようにして、血中薬物濃度曲線が「山形」になる経口投与ですが、「山のてっぺん(これは尖ってはおらす、なだらかな頂上になっている。数学的に言えば、この曲線は全ての範囲において「微分可能」である。)の値を、時間でいえば「最高血中濃度到達時間(tmax)」、濃度でいえば「最高血中濃度(Cmax)」といいます。この「tmax, Cmaxが、ka, keの大小関係、さらにはDの増減でどう変化するか」という「文章題」が時折出題されます。このことは解説スライドの8.にまとめました。そんなに難しい話ではなく、(式1)を見ながら各パラメーターの増減を考えれば理解できると思います。
さて、経口投与はこんな感じかと思います。数字を入れた計算問題というよりは、8.がポイントになる文章題に注意!といったところでしょう。
わかったかな?
明日は「急速静注繰り返し投与」をやって、この「109回国試直前番外ゆっくり解説」はおしまいにしましょう。