本日の「国試107回問42必須問題派生」ゆっくり創作理論問題の「解説」(YouTube・231030)


選択肢1は、アセトアミノフェンとメトクロプラミドというお薬がどういうものか、わかっていなければ話にならない問題です。アセトアミノフェンは簡単だと思います。一般的な解熱鎮痛薬ですね。メトクロプラミドは?これは消化管運動の調整作用(胃や十二指腸の運動を活発にする)があるお薬です。薬理学的には、「ドパミン受容体拮抗薬」に分類されます。他にも、中枢性や末梢性の嘔吐を抑える働きもありますが、こういうことは「暗記もん」です。ということで、メトクロプラミドの併用によって、消化管運動は活発化するわけですから、併用投与されたお薬(アセトアミノフェン)の吸収は活発化するわけです。「活発化する」というのは、薬物動態の言葉にすれば、「アセトアミノフェンの吸収速度が増加する」ということになります。なので、1番は×。

2番は、ビタミンB1のリボフラビンと、食事との関係です。「ビタミン剤」というと、一般の人には健康食品的なイメージがあって、「1日一回、いつでも好きな時に飲める」みたいに思うかもしれませんが、リボフラビンはトランスポーターによって体内に吸収されるビタミンです。国家試験では出てこないと思いますが、このトランスポーターは「RFVT3」と同定されています。大昔(1966年)の論文に、小腸上部に局在して発現することが報告されています。なので、リボフラビンの消化管吸収は、1)トランスポーターによること、2)そのトランスポーター(RFVT3:SLCトランスポーター群)は、小腸上部(十二指腸近傍)に発現していること、従って、3)胃からの薬物を含んだ排泄(胃内容排泄)がリボフラビンの吸収に大きく影響を及ぼすこと、が示唆されます。ということは(特に3)から)、リボフラビンを輸送できるトランスポーターには「輸送能力に限界がある」ということになります。平たく言えば、「トランスポーターのところに、一度に多量のリボフラビンが来ても、輸送できない、謂わば「積み残し」のリボフラビンが出てきてしまう、ということです。この「トランスポーターのところに、一度に多量のリボフラビンがくる」とはどういうことでしょうか?ここで、「このトランスポーターはどこに発現しているのか?」を思い浮かべてみましょう。そう、小腸上部(十二指腸側)でしたよね。ということは、胃のすぐ下、になるわけです。つまり、「胃から一度に多量のリボフラビンが流れてきても、これらのリボフラビンはトランスポーターの輸送能力を超えているので、輸送できない」のです。さらに考えて、「胃から一度に多量のリボフラビンが排出される」とは、どういう状況でしょうか?答えは、胃の中が空っぽの時です。反対に食事と一緒にリボフラビンが投与されれば、胃の中で食べ物は時間をかけて消化されるので、幽門から小腸に送られる消化物(中にはリボフラビンが含まれている)は、ゆっくりリボフラビントランスポーターのところに到達します。そうすれば、消化物の中に含まれているリボフラビン量は(相対的に)少ないので、トランスポーターの輸送能力を超えてしまうことはなくなり、順調にリボフラビンの吸収が行われることになります。つまり、リボフラビンを効率よく吸収させるためには、「胃の中が空っぽの状態」ではだめ、従って、食前の投与は不適ということになります。わかったかな?

3番は、まさに必須問題にも出ていたことですね。テトラサイクリン系抗生剤と、ニューキノロン系抗生剤は2価、3価の金属カチオンとキレートを形成することを頭に叩き込んでおきましょう。ちなみにニューキノロン系抗生剤とは、〇〇〇キサシンというような名前が抗生剤です。

4番にはクラリスロマイシンが出てきましたが、これはCYP3A4の「阻害薬」として有名です。選択肢にあるように、活性亢進という作用はありません。CYP3A4は肝臓ばかりでなく、小腸上皮細胞にも発現しているので、クラリスロマイシンによって、小腸上皮細胞のCYP3A4の活性は阻害されます。従って、小腸における初回通過効果は減じられることになり、バイオアベイラビリティーがもともと低い薬物(フェニトインやシクロスポリンなど)の吸収は、見かけ上向上することになります。

5番に出てくるジゴキシンは、小腸上皮細胞に発現している、国試に頻出な「あるトランスポーターの基質」ですが、なにかわかりますか?そうですね。P-糖タンパク質です。そして、リファンピシンは、「遺伝子の転写を活性化する作用がある」抗生剤です。つまり、リファンピシンによって、小腸上部にもともと発現しているP-糖タンパク質遺伝子の転写が活性化され、タンパク質としてのP-糖タンパク質が増えることになります。P-糖タンパク質というトランスポーターは、「薬物を中から外に排出するトランスポーター」である、というのが重要です。冒頭でお話ししたように、ジゴキシンはP-糖タンパク質の代表的な基質ですから、リファンピシンの併用投与によって、ジゴキシンの吸収は「見かけ上」低下します。どういうことかというと、単純拡散などで腸管内に入ったジゴキシンは、リファンピシンによって分子数が増えたP-糖タンパク質の基質になり、せっかく入った腸管から管腔側にせっせと排出されてしまうのです。従って、ジゴキシンの血中濃度変化は、リファンピシンの併用投与によって「低下する」ということになり、5番は間違いです。

なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。


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