YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


(解説スライドは、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。)
<この問題の突っ込んだ解説>
さて、これからは少し嗜好を変えて、必須問題だけでなく、理論問題も、魔理沙が「ゆっくり1分以内のショート解説」していこうと思います。なので、「10●回薬剤理論問題、問●●●」のゆっくりショート解説、と題して勉強していきましょう。
ということで、108回問168は、消化管吸収に関する一般的な問題ですね。選択肢1のキーワードは「門脈」です。門脈というのは静脈系ですよ。経口投与された薬物は消化管系から吸収されますが、ここで通るのか「上腸間膜静脈」で、これが脾静脈と合流して肝臓に入り、薬物代謝を受けることになります。この上腸間膜静脈と脾静脈を「門脈」と呼んでいます。なので「門脈を介さずに」の部分が間違いで、ナンセンス選択肢の典型です。ちなみに「肝臓に流入する血液の75%が門脈血であること」と、肛門坐剤は門脈を介さず吸収されるため、肝初回通過効果を「受けない」ことは、要チェックです。
2番です。P-糖タンパク質の本質は「排出型」のトランスポーターであることを、頭に叩き込みましょう。一部の消化管ではP-糖タンパク質が発現していますが、これは膜の脂溶性のために単純拡散で入ってきた薬物を、「せっせと管腔側に排出」するのが、おもな機能になります。従って、注目する薬物が「10」単純拡散で消化管内に侵入しても、発現しているP-糖タンパク質が「8」排出してしまったとしたら、差し引き「2」の薬物が腸管内に侵入したことになり、「一見、その薬物の吸収速度定数は小さくなる」ように見えることに注意しましょう。なので×。
3番は、CBTレベルの「易」問題ですね。「食後の胃内容排泄速度が上昇する」という部分で、即「×」が頭に浮かぶはずです。だって、胃の中に食べ物がたくさんあったら、「胃」はそれを「熟す」ために、ゆっくり動くわけだから、胃内容排泄速度は遅くなりますよね。
4番は、正解ですが、薬物には「非攪拌水層透過律速」の薬物と「消化管細胞膜透過律速」の2つの種類がありますよね。ちなみに「律速」のことがきちんとわかっていますか?「ある大きな一つの現象が、2つ以上の現象によって起こる場合、大きな一つの現象は、一番小さい現象の支配を受ける」ということです。口径の太いパイプと、口径の細いパイプをつないで1本のパイプを作り、プールの水を排出することを考えてみましょう。その時、プールの水が排出されるスピードは、口径の細いパイプの中を水が通るそのスピードに支配されることはわかるでしょう?この時に「口径の細いパイプの中を通る水のスピードが、プールの水の排出速度の律速になっている」といいます。さて、小腸上皮細胞を介して薬物が上皮細胞内に侵入するには、①非攪拌水層(水溶性に富んでいる)を透過すること、②細胞膜(脂質二重膜)を透過して、細胞内に薬物が侵入すること、の2つの障壁があります。もし、注目する薬物の脂溶性が高ければ、「薬物の上皮細胞への侵入にあたり」、①が②よりも強い障壁になることは、わかると思います。このことから、選択肢にある「・・・非攪拌水層の影響を受けやすい」ということは、この薬物が「非攪拌水層透過律速の薬物である」ことを意味しています。よって、4番は正解です。
5番は2つのことがわかっていなければ解けない選択肢です。まず、消化管粘膜の管腔側近傍には、プロトン(H+)が多く存在しているということです。この理由は、プロトンを排出するトランスポーターの存在によります。ところで、プロトンというのは「水素イオン」ですが、pHというのは何でしたっけ?そうですね。水素イオン濃度のマイナスの常用対数値でしたよね。ということは、消化管粘膜の管腔側のpH環境は、酸性に傾いていることを意味しています。そして、そのすぐ下には「上皮細胞の脂質二重膜」があり、脂質二重膜を透過するのは、「分子形薬物」でした。ここまで考えると、皆さんの頭の中には、横軸にpH、縦軸に「分子形薬物の%」をとった「シグモイド状曲線」そう、「分子形分率曲線」が浮かんでくることでしょう。問題冊子の空白部分でこの曲線を描き、弱酸性薬物の分子形分率と、pHとの関係を表すシグモイド曲線を描けば、文末の「・・・少ない。」ではなく「・・・多い。」が正解だということは、すぐわかると思います。
ということで、わかったかな?