本日の「ゆっくり国試(理論)問題(108回問170)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:231213)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。

なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。

(YouTubeショート動画の解説スライドは、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。)

<この問題の突っ込んだ解説>

分布過程で、投与された薬物が血管系を使うかリンパ管系を使うか、という全身循環するのに、どちらの経路がメインになるかという問題で、比較的易しい理論問題といえるでしょう。

まず、薬物が投与されるわけですが、投与方法を気にかけましょう。つまり、いきなりの静脈内投与か、皮下注、筋肉注射のような経路か、それとも経口投与かという違いです。まず、「注射」ですが、国試の「問題」に出題される意図から考えてみると、皮下注射と筋肉注射が重要です。(静脈内投与は、いきなり静脈に投与しているわけですから、「投与方法の違いによって分布に影響が出る・・・」というような問題は作れませんよね。)なので、皮下注か筋注かが問題に出てくるわけです。いずれにしても、注射された組織には、毛細血管と毛細リンパ管が通っていますが、両者の解剖学的な構造には、大きな違いがあります。ここを押さえましょう。筋肉内の毛細血管などは、一般的に血管内皮細胞が密着結合をしています。(毛細血管には、有窓内皮構造と、不連続内皮構造がありますが、この違いと、それらの構造をもった毛細血管がどの臓器に存在しているかは、自分で調べてください。)一方、毛細リンパ管の内皮細胞は、不連続内皮構造をしています。加えて、リンパ管には「開口部」が存在しています。このような解剖学的な構造の違いから、その薬物がどちらの経路で全身循環に廻るかは、「投与薬物の分子量の違い」によることがすぐにわかります。一応、分子量のカットオフ値は5,000といわれており、この値より大きいと(強心配糖体や抗体医薬など)リンパ管系へ、一般的な医薬品(分子量はだいたい500前後)は血管系へ移行するといわれています。さらに、薬物の脂溶性が大きければ、一層リンパ管系への移行が強まります(経口投与された医薬品も同じ)。

次に、リンパ管系へ移行した薬物が運ばれる経路ですが、そもそもリンパ管は、末梢から中心(胸腺、胸管リンパ)へ向かうように流れており、胸管リンパへ戻ったリンパ液は、鎖骨下静脈(重要!)から全身循環に廻るため、肝臓を先に通ることはありません。よって、初回通過効果は受けないという特徴があります。

なお、血液を動かす原動力は心臓の拍動ですよね。リンパ液の駆動力は何でしょうか?リンパ液には心臓のような機能をもつ「ポンプ」は存在せず、体動(筋肉の動き)で、イメージとしてはリンパ管が筋肉によって「しごかれる」イメージ、で動いていきます。なので、リンパ液の移行速度は、血液のそれに比べて圧倒的に遅く、血液の1/200くらいのスピードであるといわれています。

さて次に、経口投与された医薬品ですが、これも腸管系から吸収されて全身に分布します。腸管系にも当然、末梢毛細血管と末梢毛細リンパ管が通っています(通常、血管のすぐ隣にリンパ管が通っている)。この場合、「医薬品がどちらの経路を選択するか」は、その医薬品の脂溶性が大きくものを言います。つまり、脂溶性の高い医薬品(ビタミン類も国試には頻出)がリンパ管を使って全身循環にまわります。脂溶性ビタミン(A, D, E, K)は覚えましょう。

以上が、薬物動態の「分布過程」の血管系、リンパ管系で押さえておかなければいけない事項ですね。このことから、問題の答えは1, 2が正しく、他は間違えということになります。

わかったかな?


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