本日の「ゆっくり国試(理論)問題(106回問170)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:240126)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。

なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。

(YouTubeショート動画の解説スライド、および以下の<この問題の突っ込んだ解説>は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。)

<この問題の突っ込んだ解説>

トランスポーターの性質とその基質になる薬物の問題だ。細かいな、という気がしないでもないが、トランスポーターに関する文章題の理論問題としては妥当な問題だな、と魔理沙の中のヒトの弊社CEOは思いますよ。逆に言えば、選択肢に出てくる薬物の体内動態にどんなトランスポーターが関わっているかは、きちんと覚えておいてもらいたいというのが、出題者の気持ちということでしょう。

選択肢1では、ペプチドトランスポーターのPEPT1が、ABC系ではなくてSLC系のトランスポーターである、ということが必須の理解事項になっているね。ペプチドトランスポーターは、基質薬物の構造の中にペプチド結合(R-NH-CO-R’)があればこれを基質とすることに注意してほしいところです。構造式は自分で確認してもらいたいが、セフェム系抗生物質は、いわゆる「ペプチド」ではないものの、PEPT1の基質にはなるんだね。また、このようなSLC系トランスポーターは、P-糖タンパク質に代表されるようなABC系トランスポーターと違ってATPの加水分解で生じたエネルギーを駆動力としては使わない、という点が重要で、それがこの選択肢のポイントになっている。なので〇。

2番では、そもそも有機アニオントランスポーター1(Organic Anion Transporter 1)がSLC系のトランスポーターであることを知っていないと解けない問題です。OAT系やOCT系のトランスポーターは、腎排泄過程で重要になるトランスポーターです。よって×。

3番ではブラバスタチンが出てきましたが、これは「HMG-CoA還元酵素阻害薬」の「スタチン薬」として有名です。薬物動態もですけれど、薬理の「高脂血症治療薬」のところでみなさんが勉強しなければなりません。免疫抑制薬のシクロスポリンは、OATP1B1(Organic Anion Transporting Peptide 1B1)を阻害することが知られていますが、このトランスポーターは肝細胞の側に毛細血管側からの輸送を支配しています。つまり、スタチン薬が血流から肝細胞側に入り込むわけですが、シクロスポリンはそれを阻害することになるので、スタチン薬は血流側にとどまり、血中薬物濃度を上昇させるわけです。

4番では、末梢性ドパ脱炭酸酵素阻害薬である「カルビドパ」が出てきました。この薬は末梢性でレボドパの代謝を阻害するわけですから、レボドパの血漿中濃度は高まり、脳内に移行しやすくなりますね。また問題文中のLAT1(L-type Amino acid Transporter 1)はL型アミノ酸トランスポーターで二次性能動輸送担体です。発現場所は血液脳関門を構成する血管内皮細胞は肝細胞の細胞膜上です。これらの知識をもとに考えると、「カルビドパが脳へ移行する」というところが「でたらめ」であることがわかります。

5番ではシスプラチンとジゴキシンが出てきました。トランスポーターではOCT2が出ていますね。問題文の「シスプラチンはOCT2の基質である・・・」という部分は正解です。ところが、「ジゴキシンの排泄はP-糖タンパク質によって行われる」は、かなり重要かつ基本的で覚えておかなければいけない事項です。そして、腎排泄のところで「P-糖タンパク質」の発現部位と言ったら「尿細管上皮細胞管腔側」なのです。なので「そもそも、シスプラチンとジゴキシンは、それらを輸送するトランスポーターが違うので、輸送に競合阻害は起こらない。」が正解で、答えは×です。なお、シスプラチンは「腎毒性がある」抗がん剤であることも、実務の上では重要です。覚えておきましょう。

わかったかな?


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