YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライド、および、以下の<この問題の突っ込んだ解説>は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。)
<この問題の突っ込んだ解説>
魔理沙の中のヒトの弊社CEOが思うには、この問42と前の問41を作った出題者は同一人物ではないかな?っていう気がします。みんなも見てわかるように、図をつかったりする「筋」が同じだよね。端的に聞きたいことを図にまとめている良問といってよいでしょう。
さて、問題はP-糖タンパク質に関する3つのことを聞いています。まずは、①「P-糖タンパク質」ってなんですか?っていうこと、次は、②こいつの機能はなんですか?ってこと、三番目は、③こいつはどこにいるんですか?ってことです。
これは、さすがに薬剤師国家試験受験生で知らない人がいたら「もぐり」ですね。排出型のトランスポーターが①と②の答えですね。なので、但し書きにあるように「矢印は薬物の輸送方向を示す」わけです。ただ、単に「排出型」という「文言」を丸暗記ではなく、「排出とは、何をどこへ排出するのか?」ということまで理解していないといけません。問題は「脳毛細血管の断面」を示しているわけなので、血液脳関門(BBB)の話をしているわけですよね。だから、P-糖タンパク質の輸送基質になるような薬物(例えば、脳腫瘍に対するニトロソウレア系の抗がん剤など)を、脳実質組織(脳神経細胞の塊)から血管を使って、組織外に排出するという機能を指しているのです。従って黒い矢印の向きは「外(脳組織)から中(血管)への一方通行」になります。それで、「血液の中に排出する」わけですが、4は矢印の先端が細胞の中にとどまってしまっていて、これでは「血液中への排出」は起こりませんよね。ということで、正解は2番になります。③を詳しく記述すれば「P-糖タンパク質のBBBにおける発現部位は、脳も再血管内皮細胞の血管側」ということになるわけです。
P-糖タンパク質については解説スライドで霊夢が言っているように、いくつかの「重要な性質」があります。まずは、「基質特異性が広い」ということで、いろいろなものを輸送します。ただ、歴史的にはこのトランスポーターは1970年代にアメリカで発見され、そのきっかけが「がん患者に抗がん剤を投与すると、そのうち抗がん剤に対して抵抗性を示すようになった。これはなぜだ?」ということから、「がん細胞の表面に、細胞内に浸透してきた抗がん剤を細胞外に排出するような、特別な膜タンパク質が誘導的に発現される」ということがわかったのです。従って、P-糖タンパク質の「基質として抗がん剤がある」ということが、歴史的にも重要な意味を持っています。なお、このたんぱく質についての重要な研究は、実は我が国の金沢大学薬学部によってリードされてきた歴史もあるのです。生化学的な特性としてはATPの加水分解エネルギーを使って薬物を輸送する一次性能動輸送担体で、ここら辺の話は、国試頻出ですね。また広いfamilyを構成しており、MRP-2などもP-糖タンパク質の次くらいに、国試に時々顔を出すトランスポーターです。
また、解説スライドの3番に関係しますが、P-糖タンパク質は本質的に(抗がん剤投与などによらなくても)生体内に発現しているトランスポーターで、BBB以外にも血液胎盤関門や腎臓の尿細管などにも発現しています。つまり「余計なものを、体の中の大事なところから外(血液や尿)に排出する」という機能を本質的に果たしているわけです。
予備校の参考書では、P-糖タンパク質をはじめとして重要なトランスポーターが「一覧表」になって出ていますが、そういうものにラインマーカーで線を引っ張る勉強では、なかなか頭に入りません。現在薬学部の3年生や4年生のみなさんなど、「国試に向けて時間がある」学生さんは、自分で手書きのノートを作って、トランスポーター一覧(ABC系ばかりでなく、SLC系のものも)を作ることをお勧めします。
わかったかな?