YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライドは、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。)
<この問題の突っ込んだ解説>
ES細胞の話ですね。(Embryonic Stem cell)胚性幹細胞の略称です。簡単にまとめると、受精後5-7日程度経過した胚盤胞から取り出された細胞を、特殊な条件下で培養して得られる細胞です。この細胞には、生体を構成するすべての細胞に分化し、様々な組織や器官に分化する「多分化能」、「無限増殖能(ほぼ無限に)」という2大特徴があります。従って、ヒト組織細胞の供給源となることができ、医学研究に多大な貢献をしています。さらに、この細胞を治療が必要となる様々な臓器・組織へと分化誘導する方法論が確立されれば、移植細胞治療が可能になるのです。ただし大きな問題点があります。それは、人間になる可能性のある「受精卵」を使うことで、それに付随する倫理的な問題があります。また、現に臓器などに疾患を持つ患者さんがいても、その患者さん個人のES細胞は存在しないのです。その人の胚性幹細胞は成長して、その人個人になったのだからです。この点を克服するのが、山中伸弥京都大学教授によって開発されたiPS細胞です。
なお、iPS細胞の山中伸弥教授のノーベル賞受賞は述べるまでもありませんが、ES細胞も2007年に、マリオカペッキ、オリバースミシーズ、マーティンエバンスの3名による「胚性幹細胞を用いた特定の遺伝子を改変する原理の発見」に対して、ノーベル生理学・医学賞が授与されています。
胚性幹細胞とiPS細胞は、両者ともに多能性幹細胞であるという点で共通しています。胚性幹細胞は、受精卵から採取される多能性幹細胞である点は前述のとおりです。また、欠点としては「ヒトになる可能性のある受精卵を破壊する」という倫理的な問題がある点も前述しました。一方、iPS細胞は、成体となっている個人の細胞から作られる人工的な幹細胞である点が大きく異なります。しかし、ES細胞と同じく、細胞を採取した個人のすべての細胞、組織へ分化することができる点が大きく異なります。よって倫理的な問題もなく、iPS細胞の「元ネタ」は採取した個人の細胞ですので、それから作られた臓器を移植したとしても、拒絶反応の心配はまったくありません。開発当初は「山中4因子」といわれる4種類のがん遺伝子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)の導入によるiPS細胞のがん化の危険性が指摘されていた時期もありましたが、現在はだいぶ改善されているようです。
この程度の知識があれば、国試必須問題は問題なく解けるでしょう。問歳の選択肢を見てみると、選択肢2と3に誤答が多かったようですが、知らなかった人は「なんとなくそれっぽい」選択肢を選んだのかもしれませんね。サムネにもありますが、医療系のトピックは「勉強する」という感覚よりは、「医療人としての興味」を働かせで知識を習得するようにしておくと、いろいろな面で助けになると思いますよ。
わかったかな?