YouTubeショートで使った問題文スライドは以下です。この問題には「解説スライド」はありません。

なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
<この問題の突っ込んだ解説>
霊夢も言っていたけど、Ames試験そのものは衛生化学の分野ですね。医薬品を含む化学物質の変異原性をバイオアッセイで確認する評価法です。衛生化学の教科書や参考書であれば、必ず詳しく解説されています。ただし内容の完全な理解には、ほんの少しの微生物遺伝学の知識を必要とされる話ですね。
由来は、カリフォルニア大学バークレー校 の Bruce N. Ames 教授らにより1970年代に開発されたバイオアッセイ法です。変異原性物質には 発がん性物質(発がんにはイニシエーターとプロモーターが必要です。イニシエーションはDNAに傷をつける作用のことで、そのような作用を持つ物質をイニシエーターと呼びます。プロモーションとは細胞増殖の制御をかく乱する作用のことで、そのような作用を持つ物質をプロモーターとよびます)でもあるものが多いため、エームズ試験は発がん性の予測の意味でも実施されています。ただしエームズ試験陽性だからと言って、かならずしも発がん性があるというわけでもありません 。このバイオアッセイには、サルモネラ属の一種であるネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)のヒスチジン要求性突然変異株が使用されます。
下線部の意味を簡単に説明します。正常なネズミチフス菌はヒスチジンを合成できないため生育にヒスチジンが必要になります。つまり、培地の中にヒスチジンを加えておかないとコロニーを作れないというわけです。ところが、ネズミチフス菌に与える「ヒスチジンを抜いた栄養培地」に、同時に添加した「何らかの化合物」を加えて作った新たな培地で培養したとき、生存・増殖してきたネズミチフス菌は、栄養要求性に復帰突然変異がおこった菌株(ヒスチジンが培地の中になくても生存できる突然変異株)である、と判断できることになります。
このように、「ヒスチジンがないのだけれども、その代わりに試験したい化合物が入っている培地」のなかで、ネズミチフス菌は生存・増殖が可能になったわけですから、この「培地に添加した化合物」は「栄養要求性に復帰突然変異が起こす」化合物(つまり、ヒスチジンがなければ生きていけないというネズミチフス菌の本来の性質を、新たに加えた化合物が変えてしまい、ヒスチジンがなくても生きていけるようにしてしまった)ということができます。ややこしいですね。何度も言うようにこの化合物はネズミチフス菌のDNAに「栄養要求性の突然変異」を起こしているわけですから、上述の「発がんイニシエーション」のポテンシャルある、とも考えることができるわけです。このようなメカニズムを利用して、注目する化合物に変異原性があるかどうかを検出するのがAmes試験です。
ただし、です。
実は選択肢2「トリプトファン要求性大腸菌変異株」も「正解!」なんですね。と魔理沙の中のヒトの弊社CEOは思います。「独立行政法人 製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 生物資源利用促進課のHPを見てください。「Ames試験(復帰突然変異試験)の供試菌株 | バイオテクノロジー | 製品評価技術基盤機構 (nite.go.jp)」。ちゃんと選択肢2があるじゃないですか!不思議だ!ちなみに厚労省HPの105回薬剤師国家試験正答でも、正解は「5」となっています。誰も何も言わなかったのかな?それとも弊社CEOの頭のねじが外れてしまったのか?唯一、厚労省側に有利になるように考えを捻じ曲げると、この問題では「オリジナルのAmes試験では・・・」というのが出題意図であるので、正かは5番である、ということなのでしょうか?
みんながよくしっている予備校の参考書ででも、5だけが正解となっているし、一体どうなっているのかな?