本日の「ゆっくり国試(理論)問題(105回問171)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:240302)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。

(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年3月31日までの期間限定で「110回薬剤師国家試験への早割のお知らせ」を掲載しました。是非ご検討ください。)

<この問題の突っ込んだ解説>

代謝の理論問題としては、まあまあよく考えて作られた問題ではないかと思います。要するに「完全丸暗記」というわけではない、そこそこ、考えることを要求する、しかも、構造式を見る力も問われているということですね。ただし、問題文がよく読まないと、何を聞いているのか、魔理沙の中の弊社CEOは一瞬戸惑いました。それで、問題文を見ると、以下の3点を聞いているわけです。1)酵素Xが関わるアセトアミノフェンの代謝経路はどれだ?(これがメイン)2)その酵素Xによって、アセトアミノフェンは肝毒性を示す代謝物に変化する(これはヒント)。3)その酵素Xは、エタノールによって誘導される(これもヒント)。

アセトアミノフェンの構造式が真ん中に出ていますが、矢印の1, 2はアセトアミノフェンから直接出ています。構造式1とアセトアミノフェンの構造を比べてみると、水酸基が硫酸基に置換されています。同様に2は「なんかわからんけど、糖みたいな構造」がくっついています。じつはこれは「グルクロン酸」ですが、知っていましたか?ということから考えると、選択肢1, 2は「アセトアミノフェンの抱合体」である、とわかります。抱合は第Ⅱ相反応の主役ですが(国試対策的観点から見ると、抱合反応の主役はグルクロン酸抱合ですが、もちろんこの問題の硫酸抱合のように、他の抱合反応もあることを忘れないでください)、抱合反応の役割は「極性基付与による水溶性の増大」なので、「肝毒性」には関係ないですよね。ということで1, 2は×です。

さて3番の経路は、「アセトアミノフェンが他の代謝物に変換され(3番の化合物で、母核は1. 4-ベンゾキノン)、そいつがさらに化合物4, 5に変換されることを意味しています。つまり3の矢印の先の化合物(N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン)は、代謝中間体ということができます。さらに、この3番の化合物(NAPQI)は肝毒性を持つことで有名です。

次に、4番の化合物にくっついているのは、「グルタチオン」です。つまり、アセトアミノフェンのグルタチオン抱合体となるわけですが、中間代謝物のNAPQIを経てグルタチオン抱合されることになります。なので、4番そのものには肝毒性はありません。

選択肢5番は、「出題者が5択にするために困って、適当に「生体高分子」なるものを加えただけという「ナンセンス選択肢」」です。

ということから、1, 2, 4は「アセトアミノフェンの抱合体」ということで、肝毒性を持った化合物(代謝中間体)を得る3番の経路が答えということになります。ちなみに、3番の経路の反応を行う主役はCYP2E1で、アルコールにより誘導されることが知られています。

まとめると、①きちんと問題文で聞かれている内容を把握する。②1, 2, 4の化合物は「抱合体」であることが、置換基からわかるか?③アセトアミノフェンの母核であるベンゼン環が、p-ベンゾキノンの構造になっているところが「怪しい」、ということで、正解にたどり着けるわけです。この問題から得られる教訓は、「グルクロン酸とグルタチオンの構造は、見てわかるようにしておかなければいけない」ということでした。

わかったかな?


    PAGE TOP