本日の「ゆっくり国試(理論)問題(105回問175)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:240310)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


<この問題の突っ込んだ解説>

尿細管分泌に係るトランスポーターの問題です。ただのトランスポーターの問題というよりは、その基質薬物や併用薬との相互作用のことも併せて聞いているので、比較的良い問題といえるでしょう。選択肢順にトランスポーターを見ていきましょう。

1.中性アミノ酸トランスポーター(LAT1:L-type amino acid transporter1)は、その名の通りアミノ酸アナログを輸送するトランスポーターですが、薬物としてはパーキンソン病治療薬のL-dopaや抗てんかん薬のGabapentinを輸送します。薬物からおわかりのように脳毛細血管内皮細胞の脳実質側に発現していますが、他にも血液胎盤関門などの発現も知られています。よって、大雑把に言えば「脳細胞に栄養を送るトランスポーター」ととらえればよいかと思います。従って、選択肢の「発現場所」が間違えています。なお「併用薬」のところにある「カルビドパ」とは、レボドパをドパミンに変換する「レボドパ脱炭酸酵素」の阻害薬です。レボドパと組み合せて投与され、脳内へ移行するドパミン量の増大を目的とします。よって×。

2.定番のP-糖タンパク質が出てきてました。ジゴキシンもキニジンもP-糖タンパク質の基質であることはよく国試に出てきますね。また、近位尿細管にも発現しています。よって〇。

3.有機アニオントランスポーターOAT1, OAT3は、近位尿細管の基底膜側に発現し、有機酸やジカルボン酸のような物質の交換輸送を担当します。国試頻出のp-アミノ馬尿酸もこれらによって、尿細管細胞から尿細管腔側に排出されるわけです。また、このトランスポーターの基質がメトトレキセート(抗がん剤、抗リウマチ治療薬)で、競合薬にはプロベネシド(痛風治療薬)があることも、教科書レベルの重要事項です。

4.ペプチドトランスポーターPEPT1は尿細管分泌に係るトランスポーターで、尿細管管腔側に発現しています。しかし、メトホルミン(ビグアナイド系の2型糖尿病治療薬)には分子構造内に「ペプチド結合」がないため、基質にならない点が間違えています。×。

5.MATE1、MATE2-Kは、有機カチオンとプロトンを逆輸送するトランスポーターで、腎尿細管に発現しています。読んで字のごとく、有機カチオン排泄の最終段階を担う重要なトランスポーターです。しかし、リチウムは金属原子であり、このトランスポーターの基質ではありません。蛇足ですが、リチウムは糸球体ろ過により尿中排泄される原子です。よって×。

ということで、この問題から得られる「教訓」は、「血液脳関門、小腸での薬物吸収、胆汁排泄、尿細管分泌」のような、重要な部位ではどんなトランスポーターが発現し、何をどちら向き輸送するのか?を、自分で表にまとめておくとよいでしょう、ということかな?

わかったかな?


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