本日の「ゆっくり国試(理論)問題(104回問163)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:240405)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。

(YouTubeショート動画の問題文・解説スライド、および以下の<この問題の突っ込んだ解説>は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年5月31日までの期間限定で「110回薬剤師国家試験に向けた「新学期応援フェア」のお知らせ」を掲載しました。是非ご検討ください。)

<この問題の突っ込んだ解説>

珍しく経肺吸収の文章題です。まあ、ずいぶんと細かいところを聞いてくるような気もしますが、悪くはない問題でしょう。経肺吸収は、吸収分野のいわゆる「その他の部位」からの吸収、つまり、鼻、口腔粘膜、肺、皮膚、直腸、膣からの吸収で、直腸と口腔粘膜についてよく出てくるところでしょう。反対に膣からの吸収というのは、教科書には申し訳程度には書いてありますが、私は30年以上の教員生活の中で、国試に出題されたという記憶がありません。ということは、裏を返せば「需要が少ない」ということなのでしょうね。経膣吸収で用いられる薬剤は、性ホルモン系か性感染症系かの2つくらいで、「他に、国試に出題される」ということでは、他に優先しなければならない部位があるということです。

さて、本問ですが、経肺吸収の理解には気管支と肺、特に肺胞の解剖学の、薬物動態学レベルでの知識を知っておく必要があります。選択肢の順番に、経肺吸収のツボを見ていきましょう。

  1. 「肺上皮表面積」という言葉を使っていますが、恐らくは「肺胞上皮細胞の全表面積」のことを作問者は言いたいのだと思います。それで、肺胞がガス交換場所であるということは周知の事実ですが、肺胞の数は約3億個あるといわれています。肺胞の直径は0.1から0.2mmくらいですが、まあ計算しなくても肺胞の全表面積は大きいということがわかります。ただ、具体的な表面積の値となると、まちまちのようです。しかし、共通して言えるのは「小腸の絨毛部を含めた管腔側の表面積が、肺胞全体の表面積よりも大きい」ということは確かなようです。なので、「表面積が小腸上皮表面積よりは10倍大きい」ということろが間違いですね。
  2. 肺胞腔外には肺胞を取り巻くように毛細血管が走行しています。肺胞は、肺胞上皮細胞と間質からなりますが、この肺胞上皮細胞で酸素と二酸化炭素のガス交換が行われています。この問題の作問者は「経肺吸収ではペプチド性の医薬品が使えるか?」ということを聞きたかったのでしょう。インスリン、カルシトニン、インターフェロンの経肺吸収が良好であるということがわかっています。しかし、それは恐らくは肺胞の「高分子化合物の透過性がよい」という解剖学特徴(不連続内皮構造)による寄与が大きいためであると思われます。現に肺胞内でのペプチダーゼ、プロテアーゼの発現が報告されているので、何をもって「高発現」と定義するのか?という問題にもなりますが、この設問は「間違いとは言い切れない」のではないか?というのが、魔理沙の中の弊社CEOの見解です。
  3. 肺胞からの薬物吸収は、教科書レベルでは「単純拡散による」ということになっているので正解です。特に「脂溶性薬物」と言っているのでなおさらですね。ただ、トランスポーターが発現していると主張する論文もあります。
  4. 問題文にある「肺胞腔と毛細血管を隔てる上皮細胞層」は、「肺胞上皮」と呼ばれています。この細胞層がガス交換を担当しており、酸素と二酸化炭素の交換を行っています。また肺胞上皮には、Ⅰ型肺胞上皮細胞とⅡ型肺胞上皮細胞からなり、毛細血管内皮細胞との間には基底膜が存在しています。Ⅰ型肺胞上皮細胞は扁平肺胞上皮細胞とも呼ばれ、薄くて広い表面積をもち肺胞壁の95%を占めています。一方Ⅱ型肺胞上皮細胞は大肺胞細胞とも呼ばれ、「肺サーフェクタント」という肺表面活性物質を産生しています。これは表面張力を軽減し、肺胞の球形を維持するのに必要です。この言葉は、多分ですが、91回問47に出題されたのが最初で、以後、103回問157、106回問110、107回問36で出題されています。書いてある通りの正文です。
  5. 要は「吸入剤の粒子径が小さすぎると、呼気によって肺の外に出てしまい、肺胞まで到達できない」ということですね。0.5μmという数字がでていますが、この数字の信ぴょう性はともかく、「粒子径が小さければ小さいほど良い」ということは「ありませんよ!」ということが肝要です。よって、正解は3と4ですが、「2」は問題が不備の可能性があるのかな?という感じです。

わかったかな?


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