YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の問題文・解説スライド、および以下の<この問題の突っ込んだ解説>の解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年5月31日までの期間限定で「110回薬剤師国家試験に向けた「新学期応援フェア」のお知らせ」を掲載しました。是非ご検討ください。)
<この問題の突っ込んだ解説>
腎排泄に関する一般的な事項の文章題です。そんなに難しいとは思えないのですが、予備校の参考正解率を見てみると40%程度でよくない数字ですね。多分、選択肢1番の臨床検査の数字を頭に入れている人が少なくて、これに引っかかってしまったということなのでしょうか?
選択肢を順番に見ていきましょう。
1.は腎血流量の値を聞いている問題です。多分、このような値まで頭に入れておく受験生は少なかったのかもしれません。その意味では「闇」になってしまいましたが、実は教科書や予備校の参考書にも、必ず記載されている値です。腎血流量には男女差はなく、だいたい800~1200 mL/minといわれているます。ちなみに、糸球体ろ過速度は100~130 mL/min、腎血漿流量は500~650 mL/minといわれています。ところで、魔理沙の中の弊社CEOは、国試問題に使われている「術語」や「文章の言い回し」がどうも気になってしまうのですが、「通常成人」っていう術語はどうなのかな?って思いますが、どうなんでしょうか?もしこの術語が正しければ、逆の「通常でない成人」っているのか?いるとすれば、どういうヒトなのか?と思います。弊社CEOがこの問題を出すとすれば、「一般に、健康な成人の腎血流量は・・・」とすると思いますがね・・・
2.糸球体ろ過の本質を聞いている問題です。この選択肢単独では、必須問題レベルの問題で特段の解説は必要ないと思います。選択肢1.で「数字」が出てきているので、ついでに言うと、毛細血管内圧は75 mmHg、毛細血管内膠質浸透圧は30 mmHg、ボウマン嚢内圧は10 mmHgで、糸球体ろ過の有効ろ過圧は35mmHgです。
3.これも文章題でよく出てくる問題で、pH分配仮説の理屈がわかっているかどうか、の文章題です。サリチル酸は弱酸性薬物です。尿がアルカリ性になるとサリチル酸はイオン化し「分子形薬物」の割合が「減少」します。尿細管での再吸収において、サリチル酸は尿細管上皮細胞を透過しなければなりません。そのためには、「脂質二重膜構造」をとる尿細管上皮細胞の細胞膜を透過しなければなりませんが、そもそも「イオン形」のサリチル酸はここを透過することはできず、「分子形」のサリチル酸のみが透過できます。しかし、尿のアルカリ化によって「分子形サリチル酸」濃度は減少しているので、尿細管再吸収を受けるサリチル酸は減少し、「尿中への排出」が増加します。よって、「腎クリアランス」は「増大」することになります。×。
4.p-アミノ馬尿酸の腎クリアランスと血漿中p-アミノ馬尿酸濃度の相関を問う問題で、このような文章題で問われることもあるし、他のイヌリン、グルコースの挙動と一緒に「グラフ問題」として問われることもあります(グラフでの出題は105回問45、86回問159)。105回問45の「ゆっくり国試必須問題解説」は、弊社HPの「CEOのブログ」と「新着情報」のアーカイブ(2024年2月15日公開)に、詳しい解説を載せているので、そちらをご覧ください。ごくごく簡単に言うと、p-アミノ馬尿酸は糸球体ろ過+尿細管分泌を受ける薬物なので、血中濃度の増加に伴い、p-アミノ馬尿酸の腎クリアランスは下に凸の曲線を描いて低下してくるのですね。なので×。
5.問題文の「日本語としての文章」に対するボヤキを1.でしましたが、このもんだいもねぇ~。「・・・薬物の血中濃度が定常状態にあるとき・・・」とは、どういうことなのかな?と思います。多分出題者は「薬物の血中濃度が一定の状態で変化が認められないとき」ということをいいたいのだと思いますが、例えば、「分布過程において、血中の薬物とタンパク質との結合が定常状態にあるとき」というような表現はありますし、理解できますが、「濃度が定常状態」というのは正しい日本語なのか?という気がします。ま、ともあれ、ここで問われている薬物は「尿細管再吸収を受けない」という前提です。となると、この薬物は「糸球体ろ過のみを受ける」か、「糸球体ろ過と尿細管分泌の両方を受ける」ということです。その時、この薬物の血漿中濃度と尿中濃度の関係を問うているわけです。「尿細管分泌」について考えてみると、これは血漿中薬物を近位尿細管において種々のトランスポーターが能動的に尿細管腔へ分泌するわけですから、薬物濃度は、尿中の方が血漿中より大きいことは容易に理解できます。次に「糸球体ろ過」ですが、ぱっと見考えてしまうと、「ろ過」なので、血漿中薬物濃度と尿中薬物濃度は「同じである」と考えてしますかもしれません。ところがです。問題文をよく読むと、「尿細管において再吸収を受けない薬物の・・・」とあり、再吸収を受けないのは「薬物だけ」であることが、ヒントとして書かれているのです。どういうことかって?遠位尿細管再吸収において、再吸収される最も重要なものは何ですか?そうです。「水」ですね。ということは、「薬物は再吸収されずに尿中に排出されるけれど、水は再吸収されて体内に戻るので、相対的に薬物の尿中濃度は、血漿中濃度よりも大きくなっている」のです。ちょっとした「ひっかけ」ですね。ということで、この薬物は、糸球体ろ過のみを受けても、糸球体ろ過と尿細管分泌の両方を受けても、「尿中薬物濃度は血漿中薬物濃度よりも高い」ことになります。よって〇。
答えは、2と5です。
わかったかな?