YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年7月15日から8月30日までの期間限定で開講する「速習・薬物動態学5日間コース」のお知らせ」を掲載しました。是非ご検討ください。)
<この問題の突っ込んだ解説>
またまたの「ボヤキ」ですが、なんですかね?「薬物の経口吸収に及ぼす・・・」って??これ、「薬物の口腔内からの吸収」に間違われませんか?この問題の作者が言いたいことを、弊社CEOが「正しい日本語」に「翻訳する」と、こうなります。「経口投与された薬物の消化管からの吸収に及ぼす食事の影響として・・・」と。みなさんはどう思いますか?どこかの大学の偉い先生がこの問題作ったのでしょうが、自分の大学の薬物動態の定期試験に出す問題じゃないんだから、いやしくも「国家試験」なのだから、きちんとした日本語の問題が作れないような方を試験委員に任命するのは、「極めて如何なものか?」と、弊社CEOは「一納税者」として思う次第です。
さて、「経口投与された薬物の、消化管吸収における食事の影響」を問う問題ですが、基本的な問題です。「吸収過程の(薬物)相互作用」の問題、といってもいいでしょう。そのために、表中の「食事による吸収変化のメカニズム」には、いろいろなメカニズムが記載されているのですね。従って、この「メカニズム」の整理から見ていきましょう。
1.胆汁酸による(薬物の)可溶化、は、難溶性医薬品の溶解過程の改善で出てくる話です。胆汁酸は「生体内における石鹸(界面活性剤)」ともいえる生体内成分ですが、コール酸やデオキシコール酸を主成分としています。これらは脂溶性の高い物質を乳化してミセルを形成することで吸収を促進します。胆汁酸は通常の食事でも分泌されますが、高脂肪食を摂取すると特に分泌が盛んになります。そこで「インドメタシン ファルネシル」ですが、NSAIDsのインドメタシンのプロドラックで、経口投与される非ステロイド性抗炎症薬です。難溶性の医薬品です。なので、選択肢1は正文です。
2.キレート形成。テトラサイクリン系の抗生剤やフロキサシンのようなキノロン系の抗生剤は、Ca, Fe, Alのような2価、3価のカチオンとキレートを形成し、吸収が低下することが知られていますが、さて、「エチドロン酸二ナトリウム」とは何か?これは「キレート剤」で、化粧品や洗髪剤にも含まれているものですが、医薬品としては「骨粗しょう症」治療薬として使われているものです。なので、2番は「吸収量の増大」が間違えていて「キレート形成による吸収量の低下」が正解です。
3.胃内容排泄速度の低下が起こるのは。胃の中に食べ物がたくさん入っているとき(消化するための蠕動運動に時間がかかる)と、プロパンテリンのような「抗コリン薬」、イミプラミンのような「三環系抗うつ薬」、「フェノチアジン系向精神薬」のクロルプロマジンのような薬剤の投与時に起こる現象です。そこで「セファクロル」ですが、これはセフェム系のありふれた抗生剤で普通に消化管吸収を受ける薬剤です。なので、胃内容排泄速度がゆっくりになれば、セファクロルもゆっくりと消化管腔に出ていくことになり、「吸収もゆっくりになる」いうことになります。よって〇。
4.食物成分による分解、とは??これもなぁ~意味不明で、「何?この選択肢!」という感想です。ちなみに「メナテトレノン」とは、ビタミンK製剤として、骨粗しょう症の治療に使われるお薬です。この「食物成分により分解」という選択肢の意味が、弊社CEOにはわかりません。メナテトレノンを知らなかったとしても、この薬を経口摂取すると、「何かわからないけど、食べ物の成分によって医薬品が「分解され」、その結果、この「メナテトレノン」なる医薬品の吸収が低下する。」ということですかね??ヒトが普通に食べる食物のなかの成分が、医薬品を「分解してしまう」なんてことがあるのか?普通に考えても、「おいおい、そんなことってあるのかい?」ってなりませんか?胃酸によって分解されるペニシリン系の抗生剤とか、インシュリンをもし飲んだら、胃酸で分解され消化されてしまう、なんてことはありますが。「食べ物の中の成分が、医薬品を分解する!」とは、驚きの選択肢です。なんか、都合の良い薬やメカニズムが思い浮かばなかったから、「どうせ、誤答だし適当に入れておけ」みたいな感覚で作った選択肢のように思えてならないのは、弊社CEOだけでしょうか?
5.薬物は「リボフラビン」で、「メカニズム」に「トランスポーター」という文言が出ているので、「やった!これが正解だ!」と早とちりしてはいけません。リボフラビンには、十二指腸のあたりにそれを吸収するトランスポーターが発現していることが、国試必須問題レベルの基本事項ですが、リボフラビンは食餌と一緒に胃から出て十二指腸に到達するときに、「胃内容排泄速度」がゆっくりであれば、リボフラビン輸送トランスポーターに飽和が起こることなく「順当に」吸収され、吸収量が増加するのですね。反対に、「すきっ腹」にリボフラビンだけを摂取すると、胃内容排泄速度が急になり、輸送トランスポーターの輸送の力を超えたリボフラビンが十二指腸に到達するために、「トランスポーター輸送能力の飽和」が起こって、吸収量が低下することになります。なので、選択肢5が起こるためには、「食餌と一緒にリボフラビンを摂取しない」状況であることが必要になります。問題文では「食餌の影響」と謳っているので、×になります。
変な問題でしたが、みなさんはわかりましたか?ということで、正解は1と3です。