本日の「ゆっくり国試(理論)問題(102回問169)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:240614)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。

(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年7月15日から8月30日までの期間限定で開講する「速習・薬物動態学5日間コース」のお知らせ」を掲載しました。是非ご検討ください。)

<この問題の突っ込んだ解説>

具体的な薬(セントジョーンズワートはサプリメントですが)を使った薬物相互作用の問題です。代表的な薬物の名前が出ているので、あまり「面食らう」ことはないでしょう。問題文に書かれていることで「どこがポイントになるか?」をきちんと読み取ることが重要です。では順番に見ていきましょう。

1.聞いていることは「プラバスタチンの肝臓への移行(すなわち肝細胞内への取り込み)」が、シクロスポリンでどんな影響を受けるのか?ということですね。プラバスタチンは名前から容易にわかりますが「スタチン系」のHMG-CoA還元酵素阻害薬です。本名は「Hydroxy Methyl Grutaryl Co enzyme A」阻害薬となります。さて、これが「肝細胞へ取り込まれる」ということですから、当然のように「トランスポーター」が関わってきて、これを肝細胞内に取り込むトランスポーターは「有機アニオントランスポーター」のお仲間であるOrganic Anion Transporter 1B1(OAT1B1)です。覚えておかなければいけません。OAT2ではないので注意しましょう(一部の予備校参考書には間違えた記載がある)。となると「シクロスポリンがOAT1B1の基質になるか?(もし基質になるなら、競合的阻害の可能性があるか?)」ということですが、シクロスポリンはOAT1B1を「阻害する」ことが知られています。基質にはなりません。従ってこの選択肢は〇です。

2.フルルビプロフェンは名前からわかるように「イブプロフェン」の御親戚筋にあたるNSAIDsです。といっても「フルルビプロフェン」ってあまり聞いたことがないでしょう?では「ロキソプロフェン」は知っていますか?知っていますよね?よく聞く名前です。はい、フルルビプロフェンとはロキソプロフェンの別名で、詰まるところは「ロキソニン」です。まあ、何と言いますか、わざわざポピュラーでない別名を出すなんで、試験委員の「おつむの程度」が知れますよね。簡単に言えば「へそ曲がり」ということですよ。となると、問題文は「ノルフロキサシンは、ロキソニンが肝臓で代謝されるのを阻害するか?」ということです。まず「ノルフロキサシン」はニューキノロン系の抗菌薬です。ということは、「ニューキノロン系抗菌薬」と「NSAIDs」の併用において注意する点は?ということですが、これは「痙攣誘発」ですよね。詳しくいうと、ニューキノロン系抗菌薬はγ-アミノ酪酸(GABA)受容体の中のGABAA受容体にGABAが結合するのを阻害して中枢性の痙攣を誘発します。ロキソプロフェン(ロキソニン)は、ニューキノロン系抗菌薬のノルフロキサシンが、GABAがGABAA受容体に結合するのを阻害する効果を増強するといわれています。つまり、両者の併用により、中枢性の神経伝達の抑制が強まってしまうために、全身けいれんや意識消失などの重篤な副作用が発現します。よって、選択肢の「・・・薬理作用は増強される。」のは正しいですか、理由が「ロキソニンの肝薬物代謝酵素による代謝」ではないということですね。

3.「アスコルビン酸(ビタミンC)」、「サリチル酸」、「尿細管再吸収」ときたら、「尿細管再吸収に係る尿のpHの影響」ということが、ピンとひらめいて欲しいところです。サリチル酸は酸性薬物ですが、アスコルビン酸の併用により、尿が酸性側に傾きます。すると、サリチル酸は尿中で「分子形」の形態をとる割合が増加します。ここは「pH分配仮説」のところの話ですね。すると、分子形薬物は細胞の脂質二重膜構造を透過しやすくなり、尿細管再吸収によって、尿中から血液中へのサリチル酸の移行が活発になり、腎クリアランスは低下します。よって×。

4.セントジョーンズワートが何かを知らないヒトは多分いないと思いますが、和名は「西洋オトギリソウ」となる「サプリ」です。不安の解消や睡眠導入などに使われています。こいつはCYP2CやCYP3A4を誘導する効果があるので、このサプリの長期摂取でこれらのCYPが誘導されます。一方、ワルファリンは言わずと知れた抗血液凝固薬ですが、CYP2C9で代謝されることは、国試頻出です。従って「セントジョーンズワートの長期摂取により、CYP2C9が誘導され、これで代謝されるワルファリンは消失半減期は「短くなり」、「抗血液凝固作用」は減弱されることになります。よって×。

5.エリスロマイシンは14員環のマクロライド系抗生剤です。さて、問題文にあるように、これがCYP3A4を阻害するかどうかですが、「阻害します」。また「フェロジピン」はカルシウム拮抗薬に分類される抗高血圧薬です。フェロジピンはCYP3A4によって代謝されるので、この選択肢はそのままの「正文」ということになります。

さあ、どうでした?わかりましたかね?


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