YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年7月15日から8月30日までの期間限定で開講する「速習・薬物動態学5日間コース」のお知らせ」を掲載しました。是非ご検討ください。)
<この問題の突っ込んだ解説>
タクロリムスの「治療薬物モニタリング」ですか?治療薬物の何をモニタリングするんですかね?TDMを最初に訳した先生は、どこのどなたかは存じませんが、「血中薬物濃度のモニタリング」をいう重要な概念を訳出しなかったのは、とても残念です、というボヤキは2回目かな?
それはともかく、タクロリムスは免疫抑制剤であるのはよく知られていますよね。23員環のマクロライド・マクロラクタム構造を持っています。臓器移植や骨髄移植における免疫反応の抑制を目的に使われています。細胞内でFK506結合タンパク質と複合体を形成し、さらにカルシニューリンに結合します。この結合により、IL-2などのサイトカインの発現を抑制し、細胞障害性T細胞の分化増殖を抑制し、細胞性免疫と体液性免疫の両方を調製します。体内ではP-糖タンパク質の基質になって輸送され、CYP3A4による代謝を受けます。いわゆるハイリスクな薬になるので、TDMが必要とされるのですね。
1.実務の出題みたいな問題ですが、タクロリムスやシクロスポリンは赤血球中に多く分布することが知られ、そのため、血球も含めた全血中濃度を測定します。通常のTDMでは対象薬物の血漿中濃度を測定するのですが(そのために、採血管の中にはヘパリン等の抗凝固剤が入っている)、タクロリムスは「血球を含めた全血中濃度を測定する」ことが、国試頻出事項です。
2.これも完全に実務の問題です。タクロリムスは長期の使用等で腎障害を発生することが知られており、このためにも継続的なTDMが必要になるのですが、腎障害回避のためにはトラフ値が20 ng/mL以下にすることが望ましいとされています。これは、タクロリムスのトラフ値が、AUCとよく相関することが知られているからです。
3.タクロリムスの排泄経路の「完全暗記もん」の問題で、知っていなければどうにもならない問題です。タクロリムスはCYP3A4によって代謝される「肝代謝型」の薬物です。従って、問題文前半の「主に未変化体として」というところが間違えており、「胆汁中に排泄される」は正しく、「肝機能が低下した患者では血中濃度が高くなる」は正しくなります。出だしの「未変化体」が間違えているわけですね。
4.前述のように、タクロリムスはCYP3A4で代謝され、P-糖タンパク質の基質になります。従って、これらを誘導する薬物を併用する患者のTDMでは、タクロリムスの血中薬物濃度は「低下」します。簡単な問題ですね。
5.シクロスポリンとタクロリムスは、ともにCYP3A4で代謝されるので、両者の併用により、代謝の拮抗的阻害が起こることがあります。また、両者には共通する副作用として腎障害があります。よって、シクロスポリンとの併用で、タクロリムスの副作用である腎障害が増強される可能性が大きになり、両者の併用は禁忌となっています。
わかったかな?