本日の「ゆっくり国試(必須番外)問題(101回問14)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:240706)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。

(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年7月15日から8月30日までの期間限定で開講する「速習・薬物動態学5日間コース」のお知らせ」を掲載しました。是非ご検討ください。)

<この問題の突っ込んだ解説>

本題に入る前に、ウイルスの本質についてのおさらいをしておきましょう。まずは「構造」です。ウイルスは自身の遺伝物質である「核酸」とそれを包むタンパク質の「殻(カプシド)」から構成されていますが、ウイルスの中にはその外側を脂質二重膜(エンベロープ)で囲まれたものも存在します。カプシドの構造は正二十面体やらせん状のものがあります。またウイルスは宿主となる細胞に侵入するための「スパイク(糖タンパク質)」を持つものがあります。感染力を持つ完全な構造のウイルス粒子のことを「ビリオン」といいます。

ウイルスはそれ遺伝物質としても核酸の種類によって、DNAウイルスとRNAウイルスに分類されます。さらにカプシドの形状、エンベロープの有無などにより様々な科(family)に分類されます。なお、遺伝物質としての核酸ではDNAウイルスの場合、1本鎖と2本鎖のもの、RNAウイルスの場合はロタウイルス科のロタウイルス(下痢を起こす)以外は、すべて1本鎖と覚えておいてよいと思います。

ウイルスの細胞への感染には、①溶解感染、②潜伏感染(持続感染)、③発がん感染の3種類があります。①の溶解感染では、感染された宿主細胞は、自らの代謝をウイルス産生のために使うようになり、最終的に宿主細胞はウイルスにより破壊され、破壊された細胞からは「子ウイルス」が爆発的に飛び出していくことになります。多くのウイルス感染がこのタイプの様式をとります。②の潜伏感染・持続感染では、感染したウイルスは宿主細胞と共存した形で生存し続け、感染された宿主細胞では、免疫系による自らの攻撃を回避して生存し続けます。③の発がん感染では、ウイルスは宿主細胞の染色体DNAの中に自らを組み込ませ、それにより宿主細胞をがん化させます。そして宿主細胞は「無限増殖能」を獲得した、いわゆるがん細胞への変化します。

ウイルスの宿主細胞への感染とそれに続く増殖は、大まかに①吸着、②侵入、③脱殻、④増殖、⑤ウイルス粒子の再構築、⑥細胞からの放出、の段階を踏みます。①の吸着とは、ウイルス表面の特有な分子構造と、それに特有な宿主細胞表面受容体との結合により、ウイルス粒子が宿主細胞に結合することを意味します。②の侵入は、①のあとにウイルス粒子がエンドサイトーシスの中のファゴサイトーシスによって、ウイルス粒子が宿主細胞内に侵入することです。③脱殻とは、宿主細胞内に侵入したウイルス粒子のカプシドが分解されで中の核酸が遊離することで、これにより宿主細胞内におけるウイルス遺伝情報の複製・翻訳が容易になります。④の増殖とは、ウイルスの遺伝物質(DNA, RNA)が、宿主細胞の転写・翻訳・複製系を利用して、自己の遺伝物質を鋳型としたmRNAの生成、タンパク質の合成を行うことを指します。DNAウイルスは、遺伝物質としてのDNAの複製、転写が宿主細胞内で行われます。一方、RNAウイルスには「プラス鎖RNAウイルス」と「マイナス鎖RNAウイルス」の2つがあります。前者はゲノムとしてプラス鎖の一本鎖RNAを用います。このプラス鎖RNAはそのままmRNAとして働き、宿主細胞内でそのままタンパク質に翻訳されます。このようなRNAウイルスには、C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、デングウイルス、SARS関連コロナウイルス、MERSコロナウイルスが含まれます。また「マイナス鎖RNAウイルス」は、ゲノムとして―鎖の一本鎖RNAを用います。マイナス鎖ですので、そのままではmRNAとしては機能せず、逆転写酵素を介して+鎖であるmRNAに逆転写されます。麻疹ウイルスやインフルエンザウイルスがこれに含まれます。⑤のウイルス粒子の再構築とは、④の過程で複製されたウイルス核酸と、合成されたウイルスタンパク質が集合して、新たなウイルス粒子が再構築されることです。このように宿主細胞内で作られた「子ウイルス」は、最後の⑥の段階で宿主細胞外へと放出されていきます。

あとは、直接問題には関係していませんが、ウイルス感染症に治療について少しお話しすると、本質的には「感染者の体力」がウイルス感染症の治療に重要になります。つまり、「全てのウイルス疾患」に対しての治療は、十分な休養(睡眠・安静)と十分な栄養の確保になります。ここに出てくるのは自然免疫(INF-α/β、NK細胞)と、獲得免疫(ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、B細胞からの抗ウイルス抗体です。もちろん、タミフル(オセタミビル:ノイミラニザーゼ阻害薬)のような抗ウイルス薬もありますが、ウイルスそのものの不活化の目的ではなく、ウイルスの増殖・拡散の防止を目的としたものです。また狂犬病ワクチンのように、非常に有効なワクチンも存在しますが、みなさんもご存じのように、COVIS-19にはいろいろな「ワクチン」が存在はするものの、「果たしてどうなの?」というような状況のもののあります。

ということで、問題の本論に戻ると、ウイルスのもつ遺伝物質がDNAかRNAかは「暗記」するしかありません。答えは4番の「ヒトパピローマウイルス(HPV)」で、子宮頸がんの主要な原因の一つといわれているものです。他は全てRNAウイルスです。

わかったかな?


    PAGE TOP