本日の「ゆっくり国試(必須番外)問題(101回問19)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:240710)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。

(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年7月15日から8月30日までの期間限定で開講する「速習・薬物動態学5日間コース」のお知らせ」を掲載しました。是非ご検討ください。)

<この問題の突っ込んだ解説>

またまた、この問題の出題者の日本語のセンスにはあきれます。細菌とウイルスを「物質」って言いますかね?細菌は「生物」でウイルスは「物質」じゃないですかね。弊社CEOが「出題者の日本語のセンスを疑う」と思うのは、5択の選択肢の4つに「細菌」を入れ(間違い選択肢)、1つに正解である「ウイルス」を入れた選択肢を作ったものだから、それらをひっくるめてなんて言えばいいか困ったんでしょう。それで「・・・食中毒の原因物質・・・」という言葉を使ってしまった。まあ、ほんとに毎度のことだけど、試験委員の日本語能力にはあきれかえります。素直に「・・・食中毒の原因菌、もしくは原因ウイルスはどれか・・・」とという言葉が、どうして思い浮かばなかったのでしょう?私がこの問題を出すとしたら、5択のうちの3つは「細菌」、1つに寄生虫(例えばアニサキスなんか)、1つに正解の「ノロウイルス」を入れておいて、「・・・発生患者数が最も多い食中毒の原因となるものはどれか・・・」としますがね。ほんと、作問者と試験委員会委員長には反省をしていただきたいと思います。何度も言いますが「国家試験」なのだから。

という「毎度のボヤキ」を述べましたが、実はこの「ボヤキ」から、選択肢の5番のみがウイルスで、他は全部「細菌である」ことがわかっただけで、選択肢の中身を知らなくても、5番が正解だとわかってしまいます。その理由は「食中毒の原因物質」という言葉を使わざるを得なかった理由を深読みすればよいのです。選択肢1, 2, 3, 4, は「細菌」で「ひとくくりの言葉でまとめられる」が、選択肢5のみが「ウイルス」で、これがあるがために、作問者は「・・・食中毒の原因菌・・・」という言葉がつかえなかったのだ。だから、正解は5番だよ、ということです。という「テクニック」は、試験問題を多数「研究する」ことで自然と身に付くものですが、解説は正攻法で見ていきましょう。

まずは、正解5.の「ノロウイルス」ですが、これは感染性胃腸炎を引く起こすウイルスで、主に冬場に食中毒が発生するものです。厚労省によれば、食中毒患者の約30%以上がノロウイルスによるものであり、特に11月から翌年の2月にかけての発生が70%を占めています。患者の吐瀉物や排泄物からの感染も起こるので、注意が必要です。

1番の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、ヒトの鼻腔や皮膚表面などに普通に存在する常在菌です。耐熱性の高いエンテロトキシンを産生し、これが食中毒の原因物質になります。潜伏期間は比較的短く、食後数時間程度で悪心、嘔吐、下痢のような典型的な症状が合わられます。発生時期は夏場(7月、8月)が多く、飲食店での発生か多い傾向にあります。年間数千人程度の発生患者数で推移しています。

2.カンピロバクター・ジェジュニ/コリ。これは一つの最近の名前ではなく、Campylobacter jejyuniCampulobactor coliという2つのカンピロバクター属の細菌の名前なので間違わないようにしてください。カンピロバクター属は、鶏、豚、牛などの家畜の腸内に広く分布し、ヒトに対して下痢症状を引き起こす細菌です。微好気性であり、通常の大気(酸素濃度21%)では増殖できません。保菌動物では、Campylobacter jejuniは鶏、同coliは豚です。食中毒菌としての潜伏期間は数日程度で、発症時には腹痛、下痢、発熱などが主な症状です。年間数千件程度の患者発生が報告されています。

3.サルモネラ菌(Salmonella enterica)。細胞内寄生細菌で、チフス菌やパラチフス菌はマクロファージに感染して菌血症を引き起こすのに対して、食中毒性サルモネラ菌は腸管上皮細胞に感染し、胃腸炎を引き起こします。食品衛生学では、食中毒の原因となるサルモネラ菌を特にサルモネラ菌族と呼びます。牛、豚をはじめ、犬や猫、鳥などのペットの体内にも生息しています。高湿度や35度以上の高温で活発に増殖しますが、低温では増殖が停止します。また加熱には弱いため、食品の加熱は食中毒予防の観点から重要です。食中毒の症状は、菌体摂取後半日から二日程度の潜伏期間のあと、悪心、下痢、腹痛などの典型的な食中毒症状を呈しますが、通常は自然治癒するものの、乳幼児、高齢者では、脱水症状による深刻な状態に陥ることもあります。近年での患者数は数千人程度で減少傾向にあります。

4.腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic Escherichia coli, EHEC)(ベロ毒素産生菌)とは、ベロ毒素(Verotoxin)を生産する大腸菌です。このベロ毒素は非常に強力で、10個から100個ほどの菌体が人体の中に入っただけでも発症し、代表的な菌には有名な「O157」があります。食中毒症状には、腹痛、下痢、血便がありますが、重症化すると腎機能障害や意識障害が発生することがあります。年間の患者発生は、おおむね1000人以下で推移しています。

というような「食品衛生学」分野での「食中毒細菌」の基本的な特性を、まずは押さえておきましょう。あと、「過去10年間の推移」は、これは「知らなければ話にならない」問題です。対策としては、報道される食品衛生学上のトピックに注意を払っていく、ということでしょうか。

わかったかな?


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