YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年7月15日から8月30日までの期間限定で開講中の「速習・薬物動態学5日間コース」のお知らせ」を掲載しています。是非ご検討ください。)
<この問題の突っ込んだ解説>
血液脳脊髄液関門の実体を形成している細胞を聞いています。知っている人には1秒で解ける問題で、また「知っていなければいけない重要事項」と言えるでしょう。従って、その意味においては「必須問題」としては適切な問題です。
しかし、「出題者」の立場から考えると、4問の「誤答」を入れ込まなければならず、苦労した(?)跡が見られます。選択肢1の「神経細胞」や2の「毛細血管内皮細胞」などに、苦労のあとが見て取れますが、1の「神経細胞」など、「どうせ、こんな選択肢に〇をつける受験生はいないだろう」という、なかば「どうでもいいや」みたいな感じで付け足したものでしょうね。しかし、某予備校の解答率を見てみると、いるんですねぇ~。これに〇をつける人が。恐らく、薬物動態学に限らず、「基礎」の勉強ができていないのでしょう。
さて、答えは3の「脈絡叢上皮細胞」です。そもそも「血液脳脊髄液関門(Blood – Cerebrospinal Fluid Barrier, BCSFB)とは、血液と脳脊髄液(CSF)との間の物質交換を厳密に制御するバリアのことです。実態は「脈絡叢(Choroid plexus)」という脳の特定の部位に存在する細胞によって形成され(これが正解の「脈絡叢上皮細胞」)、血液中の有害物質や病原体が脳関髄液に入るのを防いでいます。その一方で、栄養素やホルモンなど、脳の機能に必要な物質は通過させます。また、脳の代謝活動で生じた老廃物を血液に戻す機能もあります。脈絡叢上皮細胞は密接結合で構成されており、トランスポーター(GLUT1, LAT1(大型中性アミノ酸トランスポーター)、SGLT1(ナトリウム依存性グルコース共輸送体1)、P-糖タンパク質、MRP1, OAT3, OCT2など)も発現しています。
他の選択肢を見ていきますが、1番は前述したように「論外」。2番も「論外」に近い選択肢ですが、「どこの毛細血管なのか?」が書いていないので、困ってしまいますね。4番の「アストロサイト(astrocytes)」とは、別名「星状膠細胞(せいじょうこうさいぼう)」とも呼ばれ、形態学的には星のような形をしています。神経細胞を支持し、その機能を維持するグリア細胞の一種です。アストロサイトの機能には、GABAなどの神経伝達物質の取り込みと再利用・分解、血液脳関門の形成と維持など種々のものがあります。次に5の「周皮細胞」ですが、これは毛細血管や小動脈の壁に存在する多機能な細胞で、血管の安定性や構造の維持、血管壁の収縮と弛緩による血流のコントロール、血管新生の調整、血液脳関門、血液脳脊髄液関門などのバリア機能を維持する手助けを行っています。なので、厳密に言えば、選択肢3以外にも、この「周皮細胞」が不正解とは言い切れない可能性があります。試験委員会はどう考えているのでしょうかね?
ということで、一応の正解は3の「脈絡叢上皮細胞」です。
わかったかな?