YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年7月15日から8月30日までの期間限定で開講中の「速習・薬物動態学5日間コース」のお知らせ」を掲載しています。是非ご検討ください。
<この問題の突っ込んだ解説>
尿細管分泌に関与するトランスポーターを選ばせる問題ですが、必須問題としては妥当なレベルで、きちんと勉強している人にとっては5秒以内で正答できる問題です。
まずは、選択肢にあるトランスポーターがどんなトランスポーターであるか(何を駆動力として(一次性か二次性か)、輸送する基質はなんで、存在場所はどこか?)を知っていないと話になりません。その次は、問題文にある「ありがたいヒント」、すなわち①一次性能動輸送担体であること、②輸送基質は薬物であること、③発現場所は腎尿細管上皮細胞刷子縁膜であること、を順に「篩にかければ」答えにぶち当たります。もっとも、上記①と②だけで正解することができる問題です。
まず、5択の中で①一次性能動輸送担体であるものは、2.のNa+, K+-ATPaseと、5.のP-糖タンパク質の2つしかありません。このうち、Na+, K+-ATPaseは、ATPaseとあるように、ATPの加水分解時に生じるエネルギーを使ってNa+イオン、K+イオンを細胞内外に逆輸送する(細胞内Na+イオンを3個細胞外へ、細胞外K+イオンを2個細胞内へ)トランスポーターです。この機能により、細胞膜の膜電位を調整して細胞の浸透圧バランスを保っています。従って、一次性能動輸送担体ではありますが、「薬物を輸送する」のではありません。もうここまでで、答えは5の「P-糖タンパク質」だとわかります。このトランスポーターについては、今までさんざん説明してきたので、ここでは触れませんが、すごく直感的な言い方をすると、これは「いらない物を外に排出する」ためのトランスポーターです。この機能を中心に考えれば、腎尿細管上皮細胞の、しかも刷子縁膜側(つまり、おしっこのある側)に発現しているのもうなずけるというものです。
ちなみに、他のトランスポーターについて、簡単に説明します。
1.H+/ペプチド共輸送体。代表的なものとしてPEPT1, PEPT2があります。プロトン(H+)の濃度勾配を利用してプロトンとペプチドを細胞内に輸送する膜タンパク質で、二次性能動輸送担体です。PEPT1は小腸で発現しており、食餌から摂取されたジペプチド、トリペプチドの吸収に重要です。PEPT2は主に腎臓で発現しており、ペプチドの再吸収を行います。
3.H+/有機カチオン逆輸送体。プロトン濃度勾配を利用して有機カチオンを細胞外に排出する膜タンパク質です。OCT系列のトランスポーターであるOCT1が主に腎臓や腸管で発現しており、有機カチオン(代謝産物、薬物、毒素など)の排出に関与している二次性能動輸送担体です。読んで字のごとく、プロトンと有機カチオンの輸送方向は逆方向です。
4.Na+/グルコース共輸送体。代表的なものにSGLT1, SGLT2があります。ナトリウムイオンの濃度勾配を駆動力とし、グルコースを細胞内に輸送する二次性能動輸送担体の膜タンパク質です。SGLT1は小腸上皮細胞に多く発現しており、食餌からグルコースとガラクトースの吸収に重要な役割を果たします。また、腎臓では遠位尿細管に発現しています。SGLT2は主に腎臓の近位尿細管に発現しており、血液からのグルコース再吸収に関与します。
わかったかな?