本日の「ゆっくり国試(必須番外)問題(100回問20)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:240821)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。

(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年7月15日から8月30日までの期間限定で開講中の「速習・薬物動態学5日間コース」のお知らせ」を掲載しています。是非ご検討ください。

<この問題の突っ込んだ解説>

いわゆる発がんの2段階仮説から、発がんプロモーターを問うている問題です。ということで、「発がんの2段階仮説」とはなにか、から見ていきましょう。

これは、がんの発生過程を理解するための概念であり「開始期(initiation)」と「促進期(promotion)」の2つの過程から構成されています。このモデルは、特に「化学物質による発がん」のプロセスをよく説明しているモデルです。

開始期(initiation)

正常な細胞が遺伝的損傷を受けて、がん細胞へ変化する最初のステージです。このような「遺伝的損傷」には、発がん物質によってDNAに突然変異が生じることがあり、それが修復系による修復を免れて「固定」されることで「がん細胞への下地」ができるわけです。

促進期(promotion)

これはinitiationによって変異を受けた細胞が増殖し、がん細胞への変化に向かって突き進むステージです。ここには、促進因子(promoter)が関与し、変異細胞の生存と増殖を助長します。

例えば「喫煙による肺がんの発生」を2段階仮説に基づいて考えてみると、まずは、たばこの煙に含まれるベンゾピレンがDNAに突然変異を引き起こします。これがinitiation。次に、アルコールの摂取や、日常的な喫煙習慣、他の基礎疾患などがpromoterとなって、突然変異した細胞が増殖し、結果的に目に見える「がん腫」になるのです。

この問題には5つのいろいろな物質が出ていますが、要は「イニシエーターとプロモーターはどれか?」ということで、正解は5番の「オカダ酸」のみがプロモーターであり、あとは全てイニシエーターです。オカダ酸は「岡田さん」ではなく、渦鞭毛藻か生成する毒素で、これらの藻類は海洋生物である二枚貝に寄生しています。従って、下痢性貝毒の原因物質として知られています。オカダ酸は、構造的には複雑な多環系ラクトンからなるポリケチドと呼ばれる天然物です。動物や人に対して強い毒性を持ち、摂取すると激しい下痢、腹痛、嘔吐などを引き起こします。その作用機序は、プロテインフォスファターゼ1(PP1)および、プロテインフォスファターゼ2A(PP2A)の阻害剤として機能します。これらの酵素は細胞内シグナル伝達に重要な機能を持っているので、いろいろな細胞機能が影響を受け、がん化につながっていくと考えられています。

選択肢1の「アフラトキシンB1」は、Aspergillus flavusが生産するカビ毒(マイコトキシン)の一種です。シトクロムP450によるエポキシ化の代謝によって活性代謝物になりますが、このエポキシドが肝がんを発生させる発がんイニシエーターになります。

選択肢2の「ジメチルニトロソアミン」は、たばこの煙に含まれる強力な発がんイニシエーターです。シトクロムP450による脱N-メチル化によって活性化されたメチルカチオン(CH3+)がDNAをアルキル化します。

選択肢3の「サイカシン」は、ソテツ類に含まれる植物由来の化合物です。これが体内に入ると、腸内細菌叢の出すβ-グルコシダーゼによって加水分解され、グルコースが外れてメチルアゾキシメタノールが遊離します。これが肝毒性を発揮し、ヒトに対する発がんイニシエーターとして知られています。

選択肢5のプタキロシドは、ワラビに含まれる発がんイニシエーターで、ノルセスキテルペンの一種です。これは加水分解によりジエノン体となり、シクロプロパン環が開裂してカチオンが生成し、DNA鎖を切断します。膀胱がんの発がんイニシエーターです。

わかったかな?


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