本日の「ゆっくり国試(理論)問題(100回問166)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:240823)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。

(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年7月15日から8月30日までの期間限定で開講中の「速習・薬物動態学5日間コース」のお知らせ」を掲載しています。是非ご検討ください。

<この問題の突っ込んだ解説>

ADMEの中の、「吸収」の項目の一番最後あたりに書いてある「その他の部位からの吸収」(注:「その他」というのは、経口投与における吸収以外の部位、という意味です)からの出題ということで、選択肢の上から、1.口腔粘膜からの吸収、2.肺からの吸収、3.皮膚からの吸収、4,鼻粘膜からの吸収、5,直腸下部からの吸収(坐剤)となっています。2.と3.を入れ替えれば、「体の上から下まで順番に」という感じで分かりやすいと思うのですが、まあ、そんなことは出題者は考えなかったのかもしれませんね。

さて、このように「その他の部位からの吸収」では、「出るところが決まって」います。例えば、2.の「肺からの吸収」では、「吸収という観点から見た、肺胞の構造」がポイントです。まあ、「肺胞からの薬物吸収は単純拡散による」というのが「覚えなければいけないポイント」で、「Ⅰ型肺胞上皮細胞」は「完全なこけおどし」です。(Ⅰ型肺胞上皮細胞は、肺胞の内側を覆っている非常に薄くひらっべたい細胞です。肺胞におけるガス交換の主役で肺胞を物理的に支持する構造体です。ちなみに、Ⅱ型肺胞上皮細胞もあり、これは肺サーフェクタントと分泌する一方、Ⅰ型細胞の損傷時にはⅠ型細胞に分化する機能も持っています。)というようなことは、知っているのに越したことはないですが、「肺からの薬物吸収」という薬物動態学の主題とは無関係で、「肺の機能形態学」ですよね?このように、この問題の作問者は、わざわざ薬物動態では通常は教えない術語を出してきて、いたずらに受験生を混乱させているだけなのです。だから「完全なこけおどし」なのです。

では、順番に見ていきましょう。

1.は口腔粘膜からの薬物吸収ですが、国試頻出な薬物は「ニトログリセリン舌下錠」ですね。「トローチ」ではありません。国試で出題され、かつ臨床的にも重要な事項は「口腔粘膜から吸収され、全身に影響を及ぼす薬物」ということなのです。だから「肝初回通過効果」が問題文に出てくるのです。口腔粘膜(舌下もしく口腔前庭(歯茎とほっぺたの間の粘膜部))から吸収される薬物は、鎖骨下静脈からいきなり全身循環に廻るために、肝初回通過効果を回避できます。また口腔粘膜は小腸の絨毛部分よりは薄い構造をしているために、薬物は速やかに単純拡散で吸収されます。従って、設問分の後半が間違えています。×。

2.この問題は冒頭で解説しましたが、肺胞からの薬物吸収は単純拡散によります。よって〇。

3.皮膚の角質層は皮膚の最も外側の構造体です。さあ、足の裏のかかとの部分と、ほっぺの角質層では、厚さが同じということはないですよね。なので、経皮吸収では、薬剤がまずは角質層を透過して真皮の方に拡散していくわけですから、角質層の厚さが経皮吸収の大きなボトルネック要因であることがわかります。よって〇。

4.2番と同じように、「機能形態学」としての「多列絨毛上皮細胞」という動態には関係しない術語を出してきて、受験生をいたずらに混乱させているたち悪い問題です。「多列絨毛上皮細胞」というのは、呼吸器や生殖器などの特定の部位に見られる、絨毛を持つ細胞です(列がたくさんあるように見えるだけで、実際には基底膜に接している、大きさが不ぞろいな細胞です)。粘液分泌による異物除去を任務にしている細胞です。問題文中の「・・・バリアー能が高く、一般に薬物の吸収は不良である」という部分が間違いです。塩酸ナファゾリンの噴霧による鼻詰まりの解消、酢酸デスモプレシン(中枢性尿崩症治療薬)のことを思い出せば、すぐに間違えがわかるでしょう。

5.直腸下部からの吸収としての坐剤の話ですね。問題文が出鱈目で「即効性が期待できる」のに、「経口投与と同等の肝初回通過効果を受ける」というのが、そもそも大きな矛盾である、ということに気が付けばよいですね。

ということで、2番と3番が答えです。

「こけおどし」の術語を引っ張り出してくるんじゃなくて、もっと「薬物動態の本質を突いた問題をつくってくれ!」と弊社CEOは思います。

わかったかな?


    PAGE TOP