本日の「ゆっくり国試(理論)問題(100回問167)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:240825)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


<この問題の突っ込んだ解説>

100回の問題ですが、4択という珍しい問題です。当時はまだ4択が許されていたのでしょうか?他にも気になったことがあって、「〇〇代謝」という術語を使っていますね。例えば、選択肢1では「酸化的代謝」、「抱合代謝」、選択肢2では「グルクロン酸抱合代謝」です。なんで「反応」という術語を使わないのか?不思議です。

薬物代謝に対する影響を、選択肢1では「病態下(肝疾患)」、選択肢2では「年齢による影響(高齢者)」、選択肢3では「喫煙による影響」、選択肢4では「遺伝子による影響」に分けて問うている問題ですが、まあ、いやらしいと言いますか、細かなことを聞いています。知っているかいないかだけで、「物知り博士」には得点できるという問題です。

まず、「肝疾患における薬物代謝酵素の活性はどうなるか?」についてですが、急性の肝炎などでは「ほとんど変化がない」ことがわかっています。ところが慢性疾患(肝硬変)では話が違ってきて、一般的に酵素活性は低下します。でも、考えれば「そりゃそうだよね」という話でしょう。ただし、「いろいろな薬物代謝酵素が、一律に同じ活性変動を示すわけではない」ことが重要で、「肝疾患においては、CYP以外の薬物代謝酵素(特に抱合反応を司る酵素やアルコール脱水素酵素)の活性変動は軽度となる」ことが知られています。なので、1番は〇です。

選択肢2は「高齢者における薬物代謝酵素活性の変動に、CYPと抱合酵素の間で差はあるのか?」という話ですが、「CYPの中でも種類によって活性が低下するもの(CYP3A4, 1A2, 2C19)、ほとんで低下しないもの(2D6, 2C9)、むしろ増加するもの(2E1)など様々」です。ただし、CYP以外の薬物代謝酵素においては「弱年齢層と比べて、活性が変化しないものが多い」という傾向があります。よって、2番は×です。

とても細かい話ですよね。実はここいらの話は、比較的難易度が高く、結構値段の高い薬物代謝の専門的「某教科書」に書いてあるのですが、多分、この問題の出題者は「ネタ本」としてその教科書を使ったんじゃないかな?って、弊社CEOは思っております、ハイ。

選択肢3はトリアゾラム(短時間型睡眠薬・抗不安薬でGABAの効果を増強します)の代謝の問題で、この程度の問題なら、理論問題としてまあまあ「あり」かな?という気はします。トリアゾラムは肝臓で代謝されますが、CYP3A4がその役目を担います。一方、喫煙によって誘導されるCYPには1A2, 2E1があります。なので選択肢文章の前半部分「喫煙はCYP1A2の誘導を引き起こし」は正文ですが、後半が間違えていますね。×。

選択肢4ですが、CYPにも当然遺伝子多型は存在します。なので、代謝活性が増加する場合は添加する場合があるのは「当たり前」です。わかりやすい事例は、NAT-2(N-acetly transfease 2)の多型によって、イソニアジドに対するextensive metaboizer, poor metabolizerが存在することを思い浮かべれば納得です。〇

よって、1と4が正解です。

わかったかな?


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