YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年9月1日から30日までの期間限定で「弊社設立1周年記念キャンペーン」のお知らせを掲載しています。是非ご検討ください。
<この問題の突っ込んだ解説>
「ほう!、母集団薬物動態解析ですか?!」と弊社CEOは「腕組みをしてうなり声をあげて」しまいます。弊社CEOは、個人的にはこの分野は、確率・統計を使った薬物速度論としてとても面白い分野だと思います。ただし、です。「かなり(というか、非常に)難しい分野」であって、薬物動態学の国家試験問題に出題するのは、「極めていかがなものか?」と思っています。しかし、このように、よほどこの分野が好きな大先生が試験委員にいらっしゃるのでしょう。国試に出てくるのだから勉強しなければなりませんが、学生さんがきちんとわかるように教えるには、半期15回のカリキュラムでは圧倒的に足りない分野なのです。
ここに一組ご夫婦がいらっしゃいます。お子さんは今まで2人とも女の子でした。さて、おめでたいことに奥様が3人目をご懐妊されました。さあ、生まれてくるお子さんは男でしょうか?女でしょうか?という「確率の問題」を考えます。「そんなこと知るか!」と思うのが普通のヒトですが、これを「考える」のが、「ベイス統計学」という分野で、母集団薬物速度論の基礎になっている確率・統計なのです。答えをいうと、「女の子」です。その理由は「今まで2人が2人とも女の子だったから」なのです。この「今まで2人が女の子だった」というのが、この問題の選択肢1に文章にある「事前情報」ということなのです。わかりますか?このような「事前情報を用いて、確率的パラメータを推定する」ということは、実は、みなさんが日常的に体験しているのです。Amazonで「なにか面白そうなものを売っていないかな?」と検索するでしょう?すると後日Amazonから「こんなのどうでっしゃろ?」と自分が検索した商品に似通って商品を進めるメールがきませんか?これが「消費者Aの検索結果(「1点の血中薬物濃度の測定値」に該当する)を「事前情報」として、消費者Aが購入するであろう商品を「推定」して広告メールを送ってきている」ことになるのです。こういうことがわかっている国家試験受験生は、果たして、15,000人前後の受験者の中で、幾人いるのか?ということを、本当に弊社CEOは不思議に思います。裏を返せば、授業中に小難しい確率の公式を書いて「はい、こうなりますから覚えてください」というような授業「ではない!」授業をしている大学が、一体どのくらいあるのだろうか???と思えてならないのです。私見では、この分野は国試に出しても仕方がない(ほとんど意味がない)と思います。もっと、他の問題を充実させ、薬剤師になれる人とそうでない人を選別すべきでしょう。
ということになりますが、弊社CEOが受験生のみなさんに対してできる「母集団薬物動態解析(速度論)」の国試対策は、「過去問を一通りやれば十分です」ということです。この分野の国試問題で「数式」を出している問題は、弊社CEOの記憶では「ない」と思います。難しすぎて2分30秒で解く国試問題が作れない、からです。だから、全部の問題が、この問題がそうであるような「訳の分からない、もしくは分かったようなわからないような、術語」を使った文章題になっています。もし「いやいや、そうは言っても、とても面白そうだから、深く勉強してみたい」という方は、毎度宣伝になってしまって恐縮ですが、お金を払って弊社の授業を受講してください。
ということで、「母集団薬物動態解析」では、「同じような薬物動態学的パラメータを持つであろう集団」をまず用意します。つまり、年齢、性別、身長、体重、そのほか、臨床検査的なパラメータなど、が同じような集団です。その集団を使って、ある薬物Aを投与した時に得られる薬物動態学的パラメータ(消失速度定数、分布容積、最高血中濃度到達時間、クリアランスなどなど)を調べて数値を得るわけです。一応「似通った集団」ですから、その集団から得られる薬物動態学的パラメーターは「そんなにはずれない値の集まり」が得られるはずですが、当然「個人の個人の集まり」がもとになるわけなので、「個体間変動」はあるわけですよね。加えて、集団を構成する個人一人一人の「個体内での変動(例えば、血中薬物濃度を測定するときの測定誤差など)」もあるわけです。つまり、母集団薬物動態解析(速度論)においては、「母集団として得られる平均的な薬物動態学的パラメータ」は、そのなかに「個体間変動」と「個体内変動」を含んでいることになるのです。この前提をもとにして「母集団」から得られる「薬物動態学的パラメータ」を解析するには、NONMEM法(Nonlinear Mixed Effect Model)という方法を使いますが、実際にはコンピュータを使って解析しなければなりません。実はNONMEM法の他にも、解析方法はいくつかあるのですが、NONMEM法は①データは、母集団に属するどの患者のものであっても、また採血時間がいつであってもかまわない(ただし、採血は決めれら他時間である必要がある)、②血中薬物濃度は連続型確率分布をとるから、個体間変動には確率論における「平均」と「分散」の考え方が導入できる、③個体間変動には(体重とか、クレアチニンクリアランスとか)具体的に算出できるパラメータが使える利点がある、④一方で、個体内変動は、理論的には規定できるが、実際に算出することが困難であるというデメリットがある、というような特徴を持っています。この話わかりますか??ということから、1.は〇になります。
同様に、上記説明より2.は、母集団薬物動態解析(速度論)は「個体内変動の要因解析には使えない」となり、×になります。
3番の選択肢にある「・・・普遍性が高い・・・」という意味(どういう普遍性なのか?)が弊社CEOにはわからないでのですが、1つの母集団を使って1つの薬で得られるパラメータは独自のものであるので、同種同効薬だからといって、「同種同効薬を使う前の薬」と同じパラメータが得られるとは限りません。よって×。
4.上述したNONMEM法の①のところで、「採血は1点だけでよいが、採血時間は動かしてはいけない」というお話をしましたが、そのことを問うている問題で、〇となります。
5.「母集団」から得られるパラメーターは「多ければ多いほどよい」のですが、コンピュータを使っても計算は大変になります。この話は「多変量解析学」と呼ばれる確率・統計論の中び「共分散構造解析」という分野と絡んできます。とても面白い分野のですが、とても難しいので、これ以上のお話は割愛します。
ということなのですが、ここで説明した内容はほんの「さわり」なのですが、内容的には大学院レベル以上の、例えば製薬会社の薬物動態研究所で使われるようなお話です。これを「薬剤師国家試験」に出すというのは、いったい、どういうお考えなのか?ということです。
わかったかな?