本日の「ゆっくり国試(必須)問題(109回問47)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:240918)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。

(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年9月1日から30日までの期間限定で「弊社設立1周年記念キャンペーン」のお知らせを掲載しています。是非ご検討ください。

<この問題の突っ込んだ解説>

「血中薬物濃度」ではなく、「薬物血中濃度」という「独特の表現」を使っている点、TDMの出題なので、実務経験のおありの先生が出している可能性が高い点、を考えると、「はは~ん、あの先生がお出しになったのかな?」なんて邪推してしまいますが、まあ、そんなことは受験生のみなさんにとってはどうでもよいことです。粛々と問題を解いていきましょう。

サムネにも書いておきましたが、100回以降でTDMが出題されているのは4問あります。聞かれている内容はいずれも基本的なことばかりです。なので、実務実習に出かける直前でTDMの重要性(必要性)を勉強しておき、国試直前でもう一度「完全なる暗記もん」という観点で、予備校の参考書を使っておさらいしておけば、この手の問題で「落とす」ことはないと思います。要は、「過去問」だけをやっておけば十分ということです。

さて、選択肢はどれもTDMが必要となる薬物ばかりです。1番のテイコプラニンはグリコペプチド系抗生剤です。主にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などのグラム(+)菌感染症に使われます。また腎排泄される薬物なので、腎機能に応じた投与設計が必要ですが、これはトラフ値の濃度が40~60μg/mL以上で腎機能障害が発生しやすくなるといわれているためです。採血試料は血漿または血清を用いるので×です。

2番のバルプロ酸は言わずと知れた抗てんかん薬で、TDMでは血漿または血清を用います。有効血中濃度は50~100μg/mLで、これを超えると肝毒性や血小板減少症のリスクが増加します。従ってTDMが必要な薬物ですが、試料に全血は使いませんから×。

3番のフェニトインもTDMが必要になる有名なお薬で、同じく抗てんかん薬ですね。有効の治療薬物濃度は10~20 ng/mLです。フェニトインにTDMが必要な理由は、これ以外にも「体内動態が非線形性を示す」ことが重要です。これはフェニトインを代謝するCYP2C9およびCYP2C19の代謝活性の飽和によって起こることがわかっています。また、薬物相互作用として、フェニトインはCYP3A4やUGT酵素の強力な阻害剤であり、これらの酵素で代謝される薬物との相互作用にも注意しなければなりません。さらに、血中薬物濃度が20 μg/mLを超えるとフェニトインの中毒症状(運動失調、眼振、意識障害)が起こっています。重要なお薬ですが、これも他の薬物同様、血液試料には「血漿または血清」を用いますので×。

4番のシクロスポリンは免疫抑制剤ですが、国試問題では「お仲間」のタクロリムスが出てきますね(102回問170)。これが答えになりますが、シクロスポリンは血球成分に分布するために「全血採血試料」がTDMで使われます。シクロスポリンの有効治療濃度の範囲は150~400 ng/mL程度(臓器移植後)です。また、個体間の血中薬物濃度の変動が大きいことも知られ、これがTDMが必要な大きな理由の一つになります。またTDMではトラフ値を測定することが一般的ですが、施設によってはピーク値を測定する場合もあります。よって〇。

5番のジゴキシンは強心剤ですが、これも測定試料に使うのは血漿もしくは血清です。古くからTDMが必要な薬剤として(いわゆる、医者の匙加減、が必要な薬物)有名な理由は「治療域が狭い」ということで、0.5~1.5 ng/mLという値です。高濃度側に出現する中毒には、有名な「ジギタリス製剤中毒」があり、心血管系では不整脈、徐脈、高心拍性不整脈(しばしば致死的)が重要です。他にも消化器系の中毒症状に、吐き気、食欲不振、腹痛などがあります。よって×。

わかったかな?


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