YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。
<この問題の突っ込んだ解説>
TDMの問題は、年によっては必須と理論の両方に出ていることがあって、100回目以降では101回と109回にそういうことが起こっています。他の回では、102回問170と105回問174にも出ています。どうでもいいことかもしれませんが、サムネにも書いてある通り、この109回の2問の問題には「TDM」とだけの記載があり、それ以外の問題は「治療薬物モニタリング(TDM)」という記載になっています。毎度、弊社CEOがぼやいているところではありますが、この「治療薬物モニタリング」は「日本語としての訳出がおかしい」のです。「治療薬物の何をモニタリングするかが、この訳語ではわからないから」というのがその理由で、「最初にTDMを訳出したえら~い大先生は、あまり英語が得意ではなかったのかもしれない」ということです。ついでにこれも全くの余談ですが、日本語⇔英語のコミュニケーションは、「直訳すればよい」というのはかなりの大きな間違いです。「言霊」を伝える、とでも言いましょうか、そういうことをやらないと意味がないのです。映画の字幕翻訳を見れば、その意味が分かるでしょう、単語をそのまま置き換えるというのは全くナンセンスであり、その意味でもこの「治療薬物モニタリング」をいう直訳は、意味の通じない術語です。「血中薬物濃度モニタリング」とすべきです。この問題と必須問47は、問題文中の術語に「TDM」とだけ使っています。「治療薬物モニタリング」を使わなかっただけで、評価できる問題ですが、その意味においては、この問47と問176は、同じ出題者が出した問題かもしれないですね。
さて、余談はさておき、この問題は必須問題に出してもよいくらいの基本的な問題です。問175のように、難問で目の付け所はよいが、問題文に言葉足らずの不備がある、というようなことはなく、国試の問題というのは、こういう「基本的ではあるが、薬剤師として食っていくためには非常に重要で忘れては困る」ような問題を出すべきだと弊社CEOは思います。
さて、100回以降に限ったTDMの問題では、101回問173と105回問174に、この問題のようにTDMの必須条件のような基本的な類題がでていますので、弊社HPにある「CEOのブログ」と「新着情報」の「アーカイブ」から見てみてください。
選択肢を順番に見ていくと、
1.薬物の有効血中濃度の幅が狭ければ、ちょっとの「さじ加減」で、血中濃度が中毒域に行ったり、無効域にはいったりしますよね。だから血中薬物濃度の測定が重要になるわけです。従って、有効血中濃度の範囲が広い薬物にはTDMの必要がありません。
2.ある薬物を患者に投与した場合、「みんながみんな、同じような血中薬物濃度を示す」なら、TDMを行う必要はないわけです。ヒトによって血中薬物濃度に大きな差が出れば、当然、TDMを行わないと、投与した薬が効いているのか毒になっているのかわからないわけです。なので、「個人差が小さい」薬物は、TDMをする必要はありません。
3.薬物を単剤で投与するのではなく、特にお年寄りなんかは、いろいろなお薬を飲んでいる可能があります。つまり薬物の併用投与です。この時に相互作用を受ける可能性が低い薬剤であれば、当然「心配はなく」服用できるわけですから、TDMの必要はないのです。
4.「体内動態に非線形性が認められる」という文言は、国試のTDMでは頻出です。今さら説明はいらないと思いますが、「線形性」があれば「予測ができる」ことになりますが、「非線形性」ということは、「何が起こるかわからない」ということですね。まあ、ミカエリス・メンテン式のような「非線形性を記述する数式」があれば、その式に基づく「未来予測」はできるのですが、必ずしも、こういうわかりやすい式に従って非線形性が記述できるわけではない、ということですよ。
5.これもTDMでは国試頻出の文言で、改めての説明は必要ないとは思いますが、「副作用と対象疾患の症状の区別が難しい」ということは、血中薬物濃度が治療域にあるのか、中毒域にあるのかわからない、ということです。なので、文言は違っていますが、言っていることは選択肢1と同じです。以上から、正解は4と5です。
さあ、この問題は出来たでしょう?