YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


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(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、2024年10月1日から「学習法カウンセリング講座を始めました(新規開講授業に関するお知らせ)」を掲載しています。是非ご検討ください。
<この問題の突っ込んだ解説>
問題のリード文にある通りの「経口薬物吸収動態」の問題ですね。でも、選択肢文を見てみると1番と5番は「よく出る薬物の物性」に関係していて、他の3問は「トランスポーターがらみ」ということがわかります。とはいっても、3番の選択肢の本質は「胃内容排泄速度」になっているので、細かく分類すれば「経口投与された薬物の吸収に係る動態」は一通り出題されているわけで、理論問題としては標準的な問題と言えるでしょう。ということで、選択肢文に絡めて「吸収過程における薬物側に要因」から見ていきましょう。その次に、トランスポーターのお話です。
1.のインドメタシンファルネシルは、みなさんよくご存じのインドメタシンのプロドラックですが、脂溶性で難溶性薬物としての国試頻出薬物です。それで、問題文にある「高脂肪食を摂取したあと・・・」とありますが、このような条件下では、人体は胆汁を分泌します。もちろん普通の食事後でも胆汁は分泌されますが、高脂肪食摂取後は多く分泌されるわけです。なぜかというと「油を分解する」ためです。そのために「天然の界面活性剤」である「コール酸、デオキシコール酸」などを多く含む胆汁が必要になります。そしてインドメタシンファルネシルとは、物理薬剤学的にいう「ミセル形成」が起こり、インドメタシンファルネシルの吸収が増加するわけですね。なので、×。
5.のグリセオフルビンも同じです。これは「飲む水虫のお薬」で抗真菌剤ですが、1のインドメタシン同様、難溶性薬物として国試頻出です。ただし、このお薬は2008年に製造・販売は中止されています。さて問題文には「有効面積」という物理薬剤学で出てくる術語が出てきました。これは、医薬品の表面積のうち、溶解に寄与する面積のことで、一般的に医薬品はその粒子径を小さくすると紛体質量当たりの表面積である「比表面積」が大きくなり、有効表面積も大きくなるので溶解しやすくなり、溶解速度も向上します。まあ、ここら辺は「直観」で十分に理解することができる部分ではありますが。ということで、〇。
3.のリボフラビンは、選択肢文にあるように十二指腸部位にあるトランスポーターから吸収されることがわかっていて、ここも国試頻出です。ただし、トランスポーターによる吸収ですから、「トランスポーターのところに、リボフラビンがドカッと降りてくるのか、ちびりちびり降りてくるのか?」が問題になります。「降りてくる」というのは、十二指腸の上にある「胃」から降りてくるという意味です。従って「胃内容排泄速度」が問題となり、選択肢文の「プロパンテリン臭化物」が胃内容排泄速度を速めるのか、遅くするのか?という話になります。実は108回問42に「そのものずばり」という問題が出ていて、「胃内容排泄速度を低下させる薬物はどれか?」という問題があります。その中に、この問題の答えでもある「プロパンテリン」が出ています。弊社HPにある「CEOのブログ」と「新着情報」にあるアーカイブ(2023年11月23日:https://phhosyuu.com/yukkuri-youtube-231123/)を参照してください。なお、プロパンテリンは抗コリン薬ですから、消化管運動(胃の活動)は抑制されることになり、「胃から十二指腸」への排出がゆっくりになり、そのため、リボフラビントランスポーターは基質であるリボフラビンを飽和することなく、ゆっくり運搬することができるわけです。よって、〇。
2.まずはP-糖タンパク質がリファンピシンによって誘導されるのかどうか、という話になりますが、リファンピシンは核内受容体である(pregnane X receptor: PXR)に結合することでP-糖タンパク質の遺伝子(MDR-1)の転写を亢進し、もってP-糖タンパク質の発現を亢進します。従って、選択肢文の前半部分「・・・P-糖タンパク質の発現が誘導され・・・」までは正文です。しかし、P-糖タンパク質は「排出型トランスポーター」ですから小腸上皮細胞から中に吸収されたジゴキシンは、「吸収された分のかなりの量」が、また小腸の腸管腔内に戻されてしまうことになり、「吸収量は増大しません」。よって×。
4.セファレキシンとペプチドトランスポーターPEPT1も国試頻出です。セファレキシンはセフェム系抗生剤ですが、その構造の中にペプチド結合が含まれているため、ペプチドトランスポーターのPEPT1に認識され、腸管腔内から吸収されます。ただし、このとき、ペプチドトランスポーターは「Na+/H+逆輸送系」によって生じたH+の濃度勾配をエネルギー源として使います(二次性能動輸送)、従って、問題文のNa+が間違えていて、H+が正解です。なお、Na+の濃度勾配によって生じたポテンシャルを使って二次性能動輸送をするのはアミノ酸トランスポーターですが、まあ、細かいところの話ですね。よって×。
わかったかな?