YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、2024年10月1日から「学習法カウンセリング講座を始めました(新規開講授業に関するお知らせ)」を掲載しています。是非ご検討ください。
<この問題の突っ込んだ解説>
この問題もブラッシュアップがきちんとできていたとは言い難いB級問題ですね。まず、正解は3番の「イトラコナゾールがCYPのヘム鉄に配位結合する」というものですが、「ヘム鉄」と「配位結合」の2つがポイントになっているわけですから、これらの「誤答」を作らなければならない、つまり2つのポイントに対しての「正・誤」の問題を作らなければならないので、2の2乗通り、つまり4つの選択肢しか作れないわけです。ところが選択肢は5つ作らなければならないので、見てわかるように、5番の「イトラコナゾールがCYPを分解する」という、開いた口が塞がらないような選択肢を作ってしまったわけです。「酷い問題だ」というのが、弊社CEOのfirst impressionです。
次に、「配位結合」の対になる誤答として「共有結合」が出題者の頭に受けんだんでしょうね。まあ、それはよいとして、「配位結合する相手」の「ヘム鉄」に対する誤答が浮かばなかったんでしょう。だから、「CYPってタンパク質だよね。だったら、アポタンパク質、とでもしておけばいいか?」ということで、選択肢1と2に「CYPのアポタンパク質・・・」という文言を入れたんでしょう(この点については、最後に問題点を挙げておきました)。ついでにもう一つ言わせてもらえば、問題のリード文には「シトクロムP450(CYO)」と言っておきながら、選択肢ではすべて「CYP」という術語を使っている。まあ、みっともない問題文だと思いますよ。出題者の先生!このような意見も取り入れてもらえないでしょうかね?
さて、イトラコナゾールは、アゾール系の抗真菌薬です。細胞壁の構成成分であるエルゴステロールの合成を阻害する難溶性の薬物で国試頻出薬です。この薬物はCYP3A4の強力な阻害薬です。そのメカニズムは選択肢3にあるように、CYPのヘム鉄と配位結合することで、またこの結合は可逆的であることも重要です。したがって、化学構造の面から見れば、アゾール骨格をもつ他の抗真菌薬にもこのCYP3A4の阻害は起こるわけですね。またシメチジンのイミダゾール環、マクロライド系抗生剤のケトン基もしくはラクトン環のような構造もヘム鉄と共有結合を起こします。
他の選択肢は「荒唐無稽な選択肢です」が、1と2にある「アポタンパク質」とは何かわかりますか?これもおかしな話で、一般的に「アポタンパク質」といったら、リポタンパク質の構成成分の一部をなすタンパク質のことをいいます。リポタンパク質(脂質タンパク質:脂質とタンパク質が複合体を形成しているもの)の「タンパク質部分」を指しています。当然CYPは脂質を含んだタンパク質ではありませんから、この問題の選択肢で「アポタンパク質」というのは、かなり「おかしな」術語の使い方です。ただし、「アポ酵素」という術語はあり、この問題の要であるように、CYPはヘム鉄を含んだ「タンパク質複合体」なので、このCYPから捕因子としてのヘム鉄を除いた「純粋なタンパク質部分」のことを出題者は言いたいのだと思います。そうだとすれば「CYPのアポ酵素部分」というような表現にすべきでしょう。
ということで、いろいろ「いちゃもんだらけの問題文」ではありますが、答えは3番ということになります。
わかったかな?