YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、2024年10月1日から「学習法カウンセリング講座を始めました(新規開講授業に関するお知らせ)」を掲載しています。是非ご検討ください。
<この問題の突っ込んだ解説>
サムネスライドにも書いておきましたが、動態の薬物相互作用の問題というよりは、完全に実務の問題ですね。教科書に載るような有名な薬物作用を理解して覚えておくのは当然ですが、出題者が「これ知ってるか?」みたいな感じで出す、いやらしい問題も出てくるので、実務実習を大切にして、なにかの相互作用に遭遇するたびに、自分でそのメカニズムを理解して覚えるという勉強方法をとるしかないでしょう。「急がば廻れ」ということです。では順番に見ていきましょう。
1.セフジニルは名前からわかるようにセフェム系の抗生剤です。「鉄イオンとキレートを形成し、溶解性が低下する抗生剤」となると、何と言ってもテトラサイクリン系(テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン)と、ニューキノロン系(シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン)が挙げられますが(ここまでは、どの教科書にも書いてある)、何とセフェム系の抗生剤であるセフジニルも鉄イオンとキレートを形成して吸収が低下します。なので正文です。ちょっと「隅をねらった」問題です。
2.「セントジョーンズワートは・・・発現を誘導する」までは、そのまま覚えていただくべき正文です。次の「タクロリムス水和物との併用を避ける。」ですが、まずタクロリムス国試頻出の免疫抑制剤であることは、みなさんよくご存じでしょう。ということは、「CYP3A4の誘導とタクロリムス」における「なにか」が、この問題で問われているわけです。つまり、「タクロリムスの代謝・排泄にCYP3A4がどのようにかかわるか?が「国家試験における知識」として重要になるわけですね。さて、タクロリムスは肝薬物代謝酵素のCYP3A4によって代謝され、胆汁排泄を受ける薬物です。ここは「覚えておかなければ」話になりません。ということはCYP3A4を阻害する薬物(ケトコナゾール、クラリスロマイシン、セントジョーンズワート)との併用によって肝クリアランスは低下し、CYP3A4の誘導を起こす薬物(リファンピシン、フェニトイン)との併用によって、クリアランスは増加することになります。従って、このようなメカニズムが関与するので、この問題は正文です。
3.プロベネシド(痛風治療薬)とアンピシリンの相互作用も国試頻出です。両者は、排泄過程の近位尿細管分泌で出てくる有機アニオントランスポーター(OAT1, OAT3)を競合し、両者はお互いの尿中排泄を阻害します。よって、正文です。
4.シメチジンはヒスタミンH2ブロッカーで、胃酸分泌を抑制するため、消化性潰瘍や逆流性食道炎に使われる薬物です。また代謝過程ではCYP1A2, 2C9, 2D6, 3A4を阻害することが知られています。従って、冒頭の「シメチジンは肝CYP3A4を阻害するので・・・」までは正文です。次のトリアゾラムですが、これはベンゾジアゼピン系の不眠に対して使われる催眠薬です。GABAA受容体に結合して神経興奮を抑制します。代謝はCYP3A4によります。よって、前述の問題文の続きは「・・・トリアゾラムの作用時間の著しい延長を引き起こす・・・」までも正文ということになります。さて、続く「催眠投入薬を非代謝型のプロチゾラムに変更する」ですが、プロチゾラムは、トリアゾラムと同じベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬です。代謝はCYP3A4により代謝され、代謝後は主に尿中排泄されます。ということは、睡眠導入薬をトリアゾラムからプロチゾラムに変えてもなにも変化がない、つまりCYP3A4が阻害されるため、薬理作用が増強するだけであり何も意味がないということになります。その理由は最初にCYP3A4を阻害するシメチジンを使っているからなのです。ということは、シメチジンの代わりになる薬物として、CYP阻害作用を持たない薬物に変えるか(ファモチジンなど)、抗不安薬をCYPによる代謝を受けない物(バスピロン:セロトニン1A受容体(5-HT1A)に対する部分アゴニストで、MAOによって代謝されCYPの影響を受けにくい)に変える必要があるわけです。よって、4.がこの問題の〇ということです。代替薬物を答える問題ではないので、他の選択肢の消去によって正解にたどり着くことはできるでしょうが、実務で出くわさないと、なかなか代替薬物までは考えが回りませんよね。
5.フルルピプロフェンとはあまり聞かない薬物ではないかと思いますが、「〇〇プロフェン」という名前から「イブプロフェンのご親戚」筋だとは察しが付くでしょう。つまり、イブプロフェンと同じく、アリルプロピオン酸系のNSAIDsです。COX-1の阻害によりプロスタグランジンの生成を阻害して消炎・鎮痛作用を発揮します。また、中枢神経系への作用としては、GABA受容体に結合することで、抑制性神経伝達を遮断します。一方、ノルフロキサシンはニューキノロン系の抗菌薬であり、細菌のDNAジャイレース(トポイソメラーゼⅡ)を阻害することで抗菌作用を及ぼします。この手の抗菌薬はGABA受容体に結合することで、GABAの抑制性神経伝達の機能を低下させます。このように、フルフピプロフェンとノルフロキサシンは、同じGABA受容体を競合し、その機能を相乗的に抑制するので、これが痙攣につながると考えられます。一方、代替薬のアセトアミノフェンはNSAIDsではなく、アニリン系の解熱鎮痛薬です。従って、この代替案は正文となります。
ということで、そこそこ「骨のある」問題でした。わかったかな?