YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。
(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、2024年10月1日から「学習法カウンセリング講座を始めました(新規開講授業に関するお知らせ)」を掲載しています。是非ご検討ください。
<この問題の突っ込んだ解説>
代謝の分野から、CYPの阻害と誘導剤を答える問題です。言ってしまえば「暗記もん」なのですが、CYPの阻害にしろ誘導にしろ、そのメカニズムをきちんと理解したうえでの「暗記もん」ということになります。なので、解説スライドには、CYPの阻害と誘導の概要を書いておきました。
CYPの酵素阻害ですが、可逆的阻害には①競合阻害、②非競合阻害があり、他には不可逆的阻害があります。競合阻害は阻害剤と基質が酵素の活性部位を競合することによって起こる阻害です。従って基質に比べて阻害剤の濃度がどのくらい小さいか、大きいか(逆も、また然り)が重要になってくるわけです。代表的な例には、キノロン系抗菌薬(シプロフロキサシン)がCYP1A2を阻害する例や、アゾール系抗真菌薬(ケトコナゾール)がCYP3A4を競合的に阻害する例があります。1番のケトコナゾールもアゾール系抗真菌薬ですが、CYP3A4との複合体形成により非可逆的に阻害するとする文献もあります。いずれにせよ、P450の発現誘導はしません。
②の非競合阻害は、阻害剤がCYPの活性部位とは異なる部位(アロステリック部位)に結合し、CYPの構造や活性を変化させることで基質の代謝を妨げるもので、アロプロパノールやシメチジンがこれに該当します。
不可逆的阻害は、阻害剤がCYP酵素と結合した後、酵素と共役して修飾され、活性部位がマスキングされるもので、酵素活性は完全に失われます。この例にはエリスロマイシンがCYP3A4を不可逆的に阻害する例が知られています。
一方、CYPの誘導には、核内受容体に結合することでCYPの分子種が誘導される例が重要です。細かい誘導メカニズムは他にもありますが、国試レベルでは以下の3種を知っておけば十分で、それ以外は出てこないでしょう、
- CAR(Constitutive Androgen Receptor)。この受容体に結合する代表格はフェノバルビタールです。フェノバルビタールは細胞質でCARと結合した後、その複合体は核へ移動します。そこで、複合体はRXR(Retinoid X Receptor)とヘテロ二量体を形成します。この複合体はCYP2B6や3A4遺伝子のプロモーター領域に結合し、これらの遺伝子の転写を活性化します。
- PXR(Pregnane X Receptor)。広範な薬物に応答し、CYP3A4に代表されるCYP3Aファミリーの発現を誘導します。この受容体に結合する薬物としては、リファンピシン、デキサメタゾン、フェニトイン、セントジョーンズワートなどがあり、CYP3A4以外にも、2B6, 2C19も誘導することが知られています。
- AhR(Aryl hydrocarbon Receptor)。環境中にある芳香族炭化水素類のような化学物質(ダイオキシン、ゼンゾピレン、脂肪酸の一種など)に応答し、CYP1A1, 1A2, 1B1などの核における転写誘導に関係します。
ということで、選択肢を見ていくと、1.のイトナコナゾールや4.のシメチジンは、上述したようにCYPの競合型・非競合型阻害剤です。2.のエリスロマイシンは、その代謝中間体がCYPのヘム鉄と複合体を形成して代謝活性を阻害します。3.のセファレキシンは、特段CYPの阻害や誘導に関する報告はありません。
よって答えは、5番のフェノバルビタールで、上述のようにCARに結合することでCYP3A4の発現を誘導するわけです。
わかったかな?