#9 最適化・解析解と数値解・数値シミュレーションのモデル授業


薬物動態学Ⅱ(薬物速度論)が微分・積分のような数式のオンパレードであることの「さわり」はわかっていただけたかと思います。それで、この9回目のモデル授業は、最初に言っておくと薬剤師国家試験には絶対に出てこない内容のお話です。現代はAI(人工知能)がはやり言葉のようにもてはやされている時代になってきました。日本語には「なんか本質はよくわからないけど、みんなが使っているかっこいい言葉だから」ということで、注目を受ける言葉がありますが、AIというのはその最たるものですね。弊社CEOは、現役時代に「人工知能学会」という学会の会員でしたが、世の中に「AI」の本質をきちんと理解している人がどのくらいいるのか?ということは、正直常々疑問に思っていました。なので、この(おまけ)モデル授業では、「国家試験には絶対出ないけど、知っていたら面白いし学修の範囲が広がってくる」ようなトピックについて、本当にさわりだけになりますが、お話ししていきます。YouTube動画も30分以上あるので、初めての人には少し難しく感じるかもしれませんが、どうか、最後まで視聴していただきたいと思います。

さて、みなさんは生物系の学生実習では「試料の濃度を計算するためには、まず「検量線」を引きなさい」という指示を先生から受けた経験があると思います。つまり、標準溶液の濃度を横軸に、縦軸には吸光度をとってプロットすると、(実験がうまくいっていれば)大概きれいな直線が得られるわけです。この時に、検量線の傾きとy切片から検量線の方程式を作りますが、それには、みなさん!なんの疑いもなく電卓を弾いているだけですよね。その電卓の中では、いったいどういう理屈でどんな式が作られているのか、考えたことはあるでしょうか?じつは、この「プロットされた点から、検量線にふさわしい直線の傾き、y切片を出す操作」には、現在のAIの基となる考えかたが使われています。そして、これには「偏微分」という、大学教養課程で学修する線形代数の理屈が使われているのです。平たく言えば「最適化」という概念です。つまり、「ばらけているプロットの間に直線を引いたとき、どう引けば各プロットからの距離が最小になるか?」ということです。弊社CEOはAIの勉強を少しかじりましたが、AIで使われる「最適化」の概念を学んでいるとき、「なんだ、これって最小二乗法じゃないか!」と驚いたものでした。

次は、「数値解と解析解」というお話をしていますが、これは前回の「#8 薬物動態学に出てくる積分の考え方」のモデル授業でお話ししましたので、ここでは割愛いたします。

3番目は「数値シミュレーション」のお話を、「点滴投与中に分布容積が突然変化したら、血中薬物濃度はどのように変化するか?」ということをトピックにして、Excelを使った数値シミュレーションをお見せしています。まあ正直言って「点滴をしている患者さんがいて、その最中に分布容積が突然変化する」というような臨床上の状況というのは、なかなか考えにくいものです。あえて考えると、点滴ラインをとって麻酔薬を静注している最中に突然大出血が起こった時、ぐらいでしょうか?しかし、そのようなときに「一体どういう血中薬物濃度の式を適応すればいいんだい?」となっても、そんな式はどこにも存在していません。このような状況に適切な答えを出してくれるのが「数値シミュレーション」なのです。興味のある人は、是非モデル授業の後半を見てください。台風シーズンになると、「今朝発生した台風〇〇の、今後1週間の予想進路のシミュレーションは、このようになっています。」などという情報が、Webの上に出てくることがありますが、これはいろいろなところにあるスーパーコンピューターがまさしく数値シミュレーションを行って求めているものです。

ということで、薬物動態学Ⅰ(ADME)と薬物動態学Ⅱ(薬物速度論)のモデル授業を各回30分程度で見ていただきました。これを見て「弊社の授業を受けてみたい」と思われた方は、HPにある「お問い合わせはこちら」から、弊社宛コンタクトをとっていただき、30分程度の無料ガイダンスを受けていただければ、と思っています。

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