本日の「ゆっくり国試(必須番外)問題(101回問13)」のゆっくりショート解説(YouTubeショート:240704)


YouTubeショートで使った問題文と解説スライドは以下です。


なお「ゆっくり魔理沙と霊夢」の声は、AquesTalkのライセンスID:AQALCNTUSR01202371によります。

(YouTubeショート動画の解説スライドおよび<この問題の突っ込んだ解説>にある解説は、薬学部の現役学生の方、次回の薬剤師国家試験を受験される予定の方はダウンロードしてお使いになっていただいて構いません。なお、大学教育関係者の方、薬剤師国家試験受験予備校関係者の方でスライドのダウンロードご希望の方は、本HPの「お問い合わせホーム」から弊社宛、事前にご連絡ください。また弊社HPトップページには、本年7月15日から8月30日までの期間限定で開講する「速習・薬物動態学5日間コース」のお知らせ」を掲載しました。是非ご検討ください。)

<この問題の突っ込んだ解説>

物・化・生の生物から、分子生物学の翻訳過程にはRNAが2種類(rRNAとtRNA、ちなみに選択肢3のmRNAは「転写過程:DNA⇒mRNA」に関与するRNAです。)、このうちのtRNAを聞いている本当に基本的な問題です。これは高校生物にも出てくる問題で、ちょっと、薬学部学生の4年生が受けるCBT問題以下のレベルの問題です。薬剤師国家試験にしては、受験生に対して少し失礼ではないか?とすら、魔理沙の中の弊社CEOは感じるところであります。101回には禁忌肢の出題が導入されているはずですが、この問題はもしかすると禁忌肢だったかもしれません。

ということで、答えは2番のtRNA(transfer RNA)です。3秒ぐらいでできる問題です。万万々一この答えを知らない人がいても(もしそうなら、薬学部で何を勉強してきたのか?というレベルですよ)、問題文には「リボソームへアミノ酸を運ぶ役割を担う」という文言から「運搬」という意味の「transfer」を思い浮かべれば、答えがわかる問題です。では、とりあえず各選択肢のRNAを見ていきましょう。

1.rRNAは細胞内のリボゾーム(タンパク質合成の場所)を構成するRNAの一種です。mRNAの持つ遺伝情報(コード)は、対応するアミノ酸に翻訳されなければなりませんが、その場所は「細胞質のリボソーム上」です。つまり、核内で「転写(含む、スプライシングとCAP構造の付加、polyA tailの付加を受けたもの)」を受けた成熟mRANは細胞質でリボソームと結合して、そこでアミノ酸への「翻訳」を受けることになります。rRNAはこのリボソームの構成要素であり、リボソーム重量の約60%を占めています。もちろん原核生物と真核生物では、rRNAのサブユニットの大きさ(S)が違うので、そのことも自分で調べておきましょう。このrRNAとtRNAがなければアミノ酸が出来てくれないわけですね。ということで、rRNAは「アミノ酸合成の場の提供」なので×。

2.tRNAが正解です。リボソームまで塩基配列に対応したアミノ酸を連れてくるのがtRNAです。クローバー型の構造をしていて、その3’末端に対応するアミノ酸を一個くっつけますが、これを行うのがアミノアシルtRNA合成酵素で、できたアミノ酸を一個くっつけているtRNAがアミノアシルtRNAになります。次に、このアミノアシルtRNAがリボソームに運ばれ、mRNAのコドンに対して、各アミノアシルtRNAのアンチコドンが対合します。この反応はリボソームのA部位(アミノアシルtRNA結合部位)で行われます。次に、このA部位に結合しているアミノアシルtRNA上のアミノ酸とP部位(ペプチジル部位)に結合している別のアミノ酸をくっつけたtRNA上のペプチドの間にペプチド結合が形成され、A部位にペプチジルtRNAが形成されます。その後P部位についていたtRNAが解離し、リボソームが5’側から3’側に1コドン分移動することでペプチジルtRNAがA部位からP部位に移動します。この繰り返しによってアミノ酸が1つずつ伸びていくのが伸長反応になるのです。そして、この反応はmRNAにストップコドンが出現するまで続きます。これは、原核生物の翻訳過程の非常に大雑把な概説ですが、皆さんは是非一度教科書で復習しておいてください。

3.mRANは、まあ、これを薬学部卒業生で知っていなかったら「失格」ですので、改めて説明することはしませんが、転写過程においてmRANを合成する酵素や、原核生物、真核生物でのmRNAの生成方法、mRANの持つ重要なシグナル(CAP構造やPoly A tail、転写開始部位、スプライシング)などのキーワードは自分で確認しておいてください。

4.miRNAとは「マイクロRNA」の略称です。これはゲノム上にコードされていて、多段階的な生成過程を経て最終的に20塩基前後の配列を持っている単分子RNAです。そのような低分子一本鎖RNAの存在は以前から知られてはいましたが、機能はよくわかっていませんでした。現在では主にタンパク質の機能を制御する働きをしていることがわかっています。もともとゲノムDNA上にあるmiRNA遺伝子として存在していますが、それが転写され前駆体miRNAになり、さらにDorshaとDicerという2つの酵素によって最終的に成熟miRNAになります。重要な機能の一つに「RNAサイレンシング」というものがあり、mRNA鎖の切断やmRNAのポリAテールの短縮化などによってmRNAの生成を制御し、もってタンパク質の合成をも制御しています。このようなことから、miRNAは重要な生物学的機能を持つことが知られ、発生、がん、ストレス応答、ウイルス感染などの研究で注目されているのです。

5.siRNAとは、small interfering RNAの略で、短鎖干渉RNAもしくはサイレンシングRNAなどとも呼ばれています。miRNAによく似ていますが、「RNA干渉」の分野で登場します。RNA干渉とは、RNAウイルスやトランスポゾン由来の長鎖2本鎖RNAが分解されることにより生成し、RISC(RNA induced silencing complex:RAN誘導サイレンシング複合体)上で1本鎖siRNAになった後、相補的な塩基配列を有するmRNAと結合し、これを分解することによりタンパク質の合成を阻害します。siRAN発現プラスミドを細胞に導入すれば、人為的に特定のmRNAを切断することができるわけで、この方法により遺伝子の機能解析が行われることになるのです。ちなみにこの現象の発見者であるAndrew FireとCraig Melloは2006年のノーベル生理学・医学賞を授業しています。

ということで、正解は2番です。

わかったかな?


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